スノードーム

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 ロッジの扉に手を掛けると施錠はされておらず、彼は覗き込める分だけ細く開けた。屋内を窺う姿はまるで泥棒のようだったがそれを見咎める人物も居ない。無人だと分かって彼は扉を開けて中に入った。壁のスイッチを押すとランタン風のペンダントライトが点き、外観と同じ木目調のシンプルな屋内を照らした。扉から全体を見渡せる程度の広さで、ガーデンテーブルのような長方形の机とベンチ、簡易キッチンがあり、奥は小上がりになっていた。ドアが一つあって、不安を振り払う為に彼が勢い良く開けた所はトイレだった。 「……普通だ」  状況は別として、ロッジには何も怪しいところはなかった。彼はベンチに座って雪の降る窓の外に視線をやった。  パサッ――と音がして、彼はまどろんだ思考から引き戻された。彼は鼓動が速くなるのを感じていたが、それは驚きというよりも今日の自分の行動を一つ一つなぞって確かめたくなるような感覚だった。 「合ってる……よな?」  何に対して正解を求めているのか分からないまま彼は心の中でそう言っていた。
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