ぼくの王国

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

ぼくの王国

真っ白は病院のベットでぼくはあらゆる色を使って見えない絵を描く事ができる。ぼくにしか見えない絵は動き出す。ぼくはそこへ出かけて行ける。腕には点滴が繋がれていてベットから降りることはできないけれど、ぼくはそこへいつだって出かけられる。その世界はぼくの王国だ。そしてぼくだけの物語が生まれる場所だ、、、 ぼくは熱がある時、山の近くにある小屋に出かける古屋の前には川が流れていて、橋がかかっている。その川の水はガラスのように透き通っていて空に散りばめられて星を映し出している。小屋の真上にはいつも月が出ていて、その月はカタツムリの甲羅の形をしていてぼくはこの月を「アンモナイトムーン」と呼ぶ。小屋にはお祖父さんが住んでいてアンモナイトムーンからできた月光のお砂糖をもらうとぼくの熱はすぅっとよくなる。おじいさんにありがとうと言って小屋を出ると川の向こうから水オオカミの群が走ってくるのが見えた。 水オオカミたちはみんな銀色の毛並みをしていて、青い目を輝かせている。 「のりなさい!」 先頭を走る水オオカミがぼくに言った。ぼくはその水オオカミのところまで一生懸命に走って水オオカミの背中にまたがった。水オオカミが走り出した。水オオカミたちが川の水面を蹴るたびにしぶきがあがる。ぼくの心臓は誰よりも強く打っていた。ぼくの心臓、、、 少し進むと水オオカミが 「さあ、ここからはあなたが進んでいきなさい。」 というと水オオカミたちは溶けるように川の水と一つになった。そして朝日がのぼり、川の水がキラキラと輝いた。 水オオカミたちはその日、その日生まれ変わり、朝日が昇る前に川の水と一つになる。それが一日を精一杯に生き、死から決して逃げない水オオカミだ。 「ぼくもあのオオカミたちのように力強く生きたいな、、、」 ぼくはそうつぶやいた。鏡の水の上でぼくはしばらくそこに立っていた。ぼくは逃げてばかりだ、、、ぼくは変わりたいんだ。ぼくが生きることで誰かを喜ばせたいんだ、、、そんな思いがぼくの頭の中に込み上がってきた。 そして再び進み続けた。どこに行くかはわからない。でもぼくの体は不思議とどこにいくのかわかっているようにまっすぐ進んでいた__
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!