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「……また作り直しますか?」
「あっ、ううん! 大丈夫、全然大丈夫だよ」
再び美味しそうなオムライスが運ばれてきたはいいものの、アステリズムの食事はやはりいつもより遅い。
「体調が悪いのですか? そういえばそろそろ十一時ですね。もう寝ましょうか」
「あっ、あのっ、ちょっと待って! こ、これ食べ終わってから……!」
「いえ、もう寝ましょう。早寝しないと、明日アスさんが具合が悪くなってしまったら困ります」
「ううっ……じゃあトワイライトさん、読み聞かせしてくれる?」
「おや」
トワイライトは片眼鏡の奥で、目を丸くする。
「珍しい……というか、ずいぶんと久しぶりですね」
「だって、急に懐かしくなっちゃって」
「そうですか。では、二階に行きましょう」
「はあい。あ、このオムライス、明日の朝ごはんに食べてもいい?」
「ええ、もちろんです」
「やったぁ!」
二人はパチッと店内の明かりを消し、ふわりと濃い木の香りがする階段をたんたんと昇る。
壁に描かれた、月の満ち欠けの模様。
天井には星空。
ふっと息を吸い込むと、ふわりと胸に沁みこむ、夜の森の澄んだ空気。
アステリズムはこの階段が、階段を昇るのが、大好きだった。
トワイライトの前に立って軽やかに昇りながら、振り返らずに小さな声で呟く。
「……ごめんね。トワイライトさん」
「なぜ謝るのですか?」
「うーん……いろいろ」
「では、その謝罪はお受け取りしますが、私もアスさんに謝らなければなりませんね」
「え、なんで?」
アステリズムが振り返った。
もう数段先を昇っているので、いつもはアステリズムよりずっと背の高いトワイライトの優しい瞳が、すぐそこに見えた。
トワイライトが、穏やかに目を細める。
「いろいろです」
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