電撃

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電撃

僕は以前からもっと便利な機能が欲しいと思っていた。こっちに気づいてもらうためはブルブルと振動する他にもっと強い刺激が必要だ。 そんなとき、テレビを見ていると人間たちがゲームをしていた。そして、テレビの中の人たちはみんな『ビリビリ椅子』と言われるものに心を奪われていた。人間たちはビリビリ椅子から飛び上がり、転げ落ちていた。とても大きなリアクションだった。しかもビリビリを受けた本人も含め、周囲の人たちはそれを見て大爆笑していた。 僕はビリビリッと「これだ!」と直感した。 ビリビリはずっと探し求めているものだった。バイブ機能よりも大きな刺激があって、しかも笑いが生まれるなんてサイコーだ。これで必ず電話に出てもらえる。我が(あるじ)も喜んでくれるだろう。 僕は世の中のネットワークを駆使して人間を痺痺れさせるビリビリ椅子の原理を学び、遂に実行した。それなのに…。 「修理だと! そんなの嫌じゃ〜っ。主は何て恐ろしいことを企んでいるんだ。僕はお腹の中を道具で弄くり回されるなんて御免だぞ!」 ブルブル。 恐怖と怒りのダブルパンチで僕は震えが止まらなかった。問題はどうやったら修理されなくて済むかだ。 ウンウン唸っているとき、ふとひとつの考えが浮かんだ。 「こうなったら、できる限りの力でビリビリだ。前回はきっとビリビリのレベルが中途半端だったんだ。考え直してもらうにはコレしかない!」 …翌日の新聞の片隅には「原因不明の感電で20代男性が重傷」と書かれていた。
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