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電気
出川哲男は電車に乗っていた。車内は長椅子がすべて埋まる程度に混んでいた。喋る人はいなく、みんなスマホの画面に目を落としている。そんな中、出川は椅子に座ってボーッと対面のガラス窓を通じて景色を見ていた。
「イテッー!」
突然、出川は叫び声をあげた。
ビリビリと体に電気の衝撃を受けたからだ。椅子から飛び上がり、そのまま前方のスペースにダイビングした。ピクピク…ピク。
全身に稲妻が走っていた。周囲の他の乗客たちは何事かと騒ぎ出す。
「うわっ! 何だ?」
「あいつ床に飛び込んだぞ!」
「リアクション芸人か!?」
「…あっちを見ては駄目よ!」
「うん」
出川の突拍子もない行動に驚きつつも、心配そうに声をかけた人もいた。
「大丈夫ですか?」
出川は左足を擦りながら申し訳なさそうに話し出した。
「痛たたた…っ。すみません。何でもないです。ちょっとビックリしてしまって…。もう大丈夫ですから」
出川はビリビリと痛みが発生し始めた左足の腿を気にかけていた。そして、ズボン左のポケットに手を入れ、何かを取り出す。その手にはスマホが握られていた。
「まだ痛い…。左足のスマホのところから何だか電気が走った気がする。まさかスマホが漏電しているのか。バッテリーが火を噴くこともあるらしいし。何だか危ない気がする。これはスマホの修理が必要だな」
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