背中のもの

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 化粧水を薄く塗り、リップは淡いピンクだ。それとなくわかる程度に。しかし目立たない程度にと気を付けて。  制服は、白ブラウスに組紐のリボンと赤いライン入りのライトブラウンのブレザー。スカートは、水色を基調としたタータンチェックで、裾部分に赤いラインが入っている。  もう一度鏡の中の自分を見てから、リビングへと降りた。  すると、ラップに包んである私の分の朝食が、木目が美しいテーブルの上の円い盆に並べてあるのが見える。 白ご飯にシソのふりかけ、それから大根おろしつきの卵焼きに、わかめと油揚げのお味噌汁だ。 『大切な大切な結凪(ユナギ)へ。 パパの作る卵焼きが好きって言ってくれたね。ありがとう』 そう、メモが添えられている。  そっか。今日もパパが作ってくれたのか。 医師の仕事は忙しくて、ほとんど家にはいないから、お誕生日を祝ってもらった覚えもないのだけど、こうやって気にかけてくれていることが、なんだか嬉しくも恥ずかしくもある。  嬉しいのだけど、なんとなく、これを食べてしまったらパパの気持ちまでダメにしてしまいそうに感じて、夜ご飯に食べるとして、それには手を付けずに家を出た。  玄関を開けた途端に、青葉の楓が朝風に優しくそよぐと、穏やかな風の囁きが聴こえた。
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