宣告と決別 5

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宣告と決別 5

だから──ビシッと言ってやったのだ! 自分史上最高にかっこよく! 「ここに!ぼ…私、フォルベリッド・ドゥ・パラトゥースは『婚約者』を敬いもせず心を砕くこともしない、冷徹な悪女アーベルティーヌ・ドゥ・ヴィヴィエトと婚約破棄し!この美しく優しい天使の生まれ変わりと言っても過言ではない!私のただ唯一の薔薇、エミリーティーヌ・ドゥ・ヴィヴィエト侯爵令嬢と婚約を結ぶ!」 シンと静まった大きい広間。 フォルベリッドの前に立つ元『婚約者』と、腹の立つことに自分よりもかっこいい男は呆然としたまま、何も言えないようである。 さあ!ここで僕たち二人を祝福する拍手を! 正式な婚姻前ではあるが、浮気など常識と貞節を疑われるような悪女に嘲笑を! 「………あれ?」 「……フォ、フォルベリッド…様……?」 いつまでたっても誰も何も言わない。 ただ戸惑いと呆れと──クックッ…という小さな笑い声が聞こえてきた。 思わずカッとしてその声がした方を見たが、さすがのフォルベリッドも開いた口から吐くべき言葉を失った。 肩を微かに揺らし口に拳を当てて笑っていたのは──国王陛下だったのである。 「え…う…わ……あ……」 「フォルベリッド……様……?」 パクパクと口を開いたり閉じたりするフォルベリッドを新『婚約者』が見つめるが、その反対側ではようやく息子の暴走が止まったかとティリベリアン・ドゥ・パラトゥース伯爵が額に手のひらを当てて溜息をついていた。 「……気が済んだか?」 「えっ、は、ち、父上っ」 「大声を出さずとも聞こえておる……今夜はここで御前を失礼するぞ」 「えっ⁈で、でもっ!まだあやつの謝罪を聞いておりませぬ!」 「あ、あやつ……?謝罪……?」 どうしてこの状態でこんなに元気がいいのか──そう思いながら、息子が再び腕を伸ばした方角を恐る恐る見る。 その指先はさすがに国王陛下の方ではなくやや右にズレて、だが恐れていた通りの人物を示していた。 「……ああ、我が愚かなる息子よ……」 「はっ、はい、父上!……え?お、愚か……?」 「あちらにいらっしゃるのは、お前の婚約者エミリーティーヌ・ドゥ・ヴィヴィエト嬢の姉上アーベルティーヌ・ドゥ・ヴィヴィエト嬢と、その婚約者であらせられるマリュオンス・ローリ・ドゥ・ノートルモナス王太子殿下だ」 「え……と……?つ、つまり……アーベルティーヌは、王太子殿下と浮気してたんですかっ⁈」 その瞬間、誰にも止められない速さでフォルベリッドは自分の父親に殴り飛ばされた。 国王陛下、王妃殿下、そして王太子殿下と王太子妃となる予定の令嬢の目の前で、である。 この前代未聞の出来事が起こった夜は、まだ終わらない。
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