誤解と理解 7

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誤解と理解 7

うなだれるパラトゥース伯爵夫妻と、もう手遅れだと大きく溜息をつく彼らの長男を見、続いて悲し気な王太子婚約者とそれを労わる息子を見てから、再び国王はパラトゥース伯爵に向けて口を開いた。 「此度の騒動、そもそもが結ばれた当初から勘違いしていたようだと、そなたの息子が言っていたが?」 「……はっ。面目ございません」 「面目というほどではあるまいが……とにかく、それは事実なんだな?」 「はっ……そ、その……私はきちんと把握しておらず……」 「……何だと?」 「指摘してくれたのは我が息子……バリチアンです」 「ほう……」 親の欲目を持ったことはないが、少なくとも上の息子は優秀だと認めている。 だが下の息子は── 「一緒の家に暮らしていると、なかなか子どもの欠点は見えないもののようです。私も父の名代で領地を巡回するために家を出て初めて、弟が自分の婚約について思い違いをしているのではないかと疑い出したのです……はっきりとわかるまでは父に告げない方が良いと考えたのが間違いでした」 「なるほど……しかし、被害が大きくなる前に止めることも可能だったのではないか?」 実際のところバリチアンは弟の勘違いをかなり始めの頃から把握していたが、いずれ誰かが──まあ言ってしまえば縁を整えた父親が弟の婚約者とのやりとりを聞いて間違いに気付き、『馬鹿者』と張り飛ばして道を正すと思っていた。 「いえ。それは……弟は正しい婚約者ときちんと交流をしていたようですし、父も婚約者との交流費について予算を越えない限り、内容を問い質すことはしないでしょう」 「うむ……確かにな」 思ったよりも堂々と国王陛下と会話をする長男を見て、パラトゥース伯爵は次代は大丈夫だと思考を現実から逃がした。 それに確かにフォルベリッドは交際費を越えるようなプレゼントをしたことはなかったため、パラトゥース伯爵は相手を取り違えているとは考えていなかったのである、 むしろ積極的にやり取りしているのを好ましいと思い──いや、そこまで考えもせず、問題さえ起きなければいいと関心も持っていなかった。 母親にすれば自身の社交に忙しく、息子の教育に関しても婚約に関しても手を出さずにいたし、手を出せずにいただけのこと。 それは長男の時も同じであったが、バリチアンに関しては順調に婚約者と交流して三年前に婚姻式も迎えて、もうすぐ初孫が生まれる。 だから下の息子も同じように大丈夫だと──それが間違っていたのだと、改めて認識したのだった。
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