High five!―憧れの君と30秒―

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新しいコートに新しい靴、新しいバック。 今日はちょっと背伸びをしていつもとは一味違うお姉さんっぽコーデ。服選びですらワクワクする。ああ実際会ったら何を話そう。想像するだけでドキドキする。はじめて感じた感情。これがいわゆる「デートは準備ですらワクワクドキドキ」ってことなのね…。思わず「ふふっ」っと笑みがこぼれる。 だが、 今から私が行くのはデートではない。 私にとっては恋愛より素敵なこと。 そう、 大好きなkpopアイドルのハイタッチ会! デビュー当時から応援しているグループのメンバーに会うのだ。少ないお小遣いで買ったCDで毎回一口づつデビューCDから応募し続けて早二年…。やっとやっと当たった。一緒に応募していた友達も奇跡的に当選し、一緒に行くこととなったのだ。 午前9時、駅で友達と集合した。イベントは夕方からなのだが、一足先に行って韓国料理を食べて、日本でのイベントだが韓国旅行気分を味わおうと思ったのだ。最近どうとか世間話をしながら電車に揺られること一時間弱。 午前11時、お店に入る。注文を終え、運ばれてきたチーズボールにはむっとかぶりつきチーズを伸ばしていると前に座る友達と目が合った。大爆笑して、一通り笑い終わるまで たいそう時間がかかった。これだから親友は最高だ。はじめてのハイタッチ会も彼女が一緒なのは心強い。ねぇ、ハイタッチしながら何話す?とかそういう会話をするたび夕方への期待が募る。 午後3時、会場に到着。友達とはここから別行動だ。会場に入場してブース前に並んだ。周りは綺麗なお姉さんたちばっかりだ。緊張してきた。アナウンスでイベントが始まった。列がどんどん進む。会ったら言おうと思っていると言葉を頭の中で何回も何回も練習する。ああ、ドキドキが止まらない。あと一人、あ、ブースの内側から話し声が聞こえる。いつも画面の向こうから聞こえる声。ほんとに会えるんだって実感して、顔がこれでもかって熱くなる。告白前ってこんな感じなのかな。次の方どうぞ、ってスタッフさんの声。最高の30秒の始まりだ。 「こんにちは」って入ると、手を振って迎えてくれた。本物だ。私よりすごく身長が高い。顔ちっちゃい。おめめキラキラ。オーラが。画面で見るよりかっこいい。降り注ぐ大量の情報を脳にしっかりと焼き付け、勇気を出して手をさし出す。ハイタッチというよりももっと優しい、例えるなら手の大きさを比べるときみたいな、触れ方。胸が高鳴る。ずっと言おうと思ってた「デビューの時から応援してます」って言葉。「ありがとう」って笑う。天使。「あの、エアーでいいので頭ぽんぽんしてほしいです…。」私はなんてことをお願いしてるの。ドキドキで頭がおかしくなって、言うはずもなかったことを口走っていた。「いいよ」え、いいの。私の方へ手が伸びる、顔が近づく、本当にしてくれた。頭に手を置かれながら至近距離で微笑まれる。キュン。というかドキュン。私はもっと深く、君に落ちた。  お時間です、ってスタッフさんの声。 もう終わっちゃう。 ブースを出る間際「またね」と手を振られ、とどめを刺された。かろうじて手を振りかえしてブースを後にする。夢みたいな、でも夢じゃなかった、最高の30秒。顔が熱い。まるで恋してるみたい。 やっとのことで会場をあとにし外に出て友達と合流する。やばかった、かっこよかったと興奮冷めやらぬ友達。感動で何も言えない私。冷たい外気が火照った体に心地良い。その時友達が、「あ、雪」と呟いた。ほんとだ初雪。「韓国には初雪を恋人とか親しい人とみるとずっと一緒にいられるって言うジンクスがあるんだって」といかにもロマンチックなことを言う。「じゃあさ、」私は口を開く「今日推しに会ったのはずっとファンでいる運命ってことなのかな…。」友達は「そうかもね」って笑う。次も一緒に応募しようね。とか、次はサイン会かな。とか、話ながら電車に揺られる。笑ってときめいて、せわしない日だったけど、私めっちゃ幸せ。
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