物語の始まり

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物語の始まり

 「師匠は一体いつから魔法が使えるようになったの?」 そよ風が頬を撫でる。空は鴇色に染まろうとしていた。 「…いつだったか、少なくとも君が生まれる前だ。」 「結構前ってこと?」 『師匠』と呼ばれる彼女は沈みゆく陽をじっと眺め、遠い昔の記憶を探ろうとしていた。 「師匠?ねぇ師匠ってば、返事してよ」 「聞こえておる。」 「今日の修行は何をやるの?」 少し間をおいて彼女から返事が返ってきた。 「ふむ…では瞑想としよう」 「えぇ、、、また瞑想?もお飽きたよぉ」 「瞑想も大事な修行の一環だ。魔法使いたるもの精神をしっかr…」 「師匠の昔話教えてよ!僕そっちのほうが楽しくせいしん鍛えられる!」 弟子の意欲に負け彼女は語り始めた。 「よかろう、これより語るはこの世を守りし英雄たちの軌跡だ。」 ーーー序曲 暁星の章 「じっちゃんっ行ってくるね!」 駆け回る太陽のように元気な少女が勢いよく扉をあけた。 「転ぶんじゃないぞー」 「わかってるうわぁっ」 予定通り少女は転んだようだ。 「生きてるかー?」 小屋の奥から老人の心配の声が聞こえた。 「ゔゔ、、、後は頼んだ」 「問題ないなら早く行かんか」 今日は快晴、何かを新たに始めるにはもってこいの吉日である。この日少女は自身の通う学校の始業式を控えていた。彼女にとって学校は家族同然の友人とふれあう場であり、知らないことを知る冒険の地であった。 「今日をさいっこうの一日にしてやるんだからっ!」 彼女は気合いに満ちた一歩で思い切り地面をけり、学び舎へ駆けていった。 空は慈愛にみちていた。  
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