プロローグ

1/2
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

プロローグ

「あぁ、お赦しください神官様。この子はもう二日も食べていなかったのです」  昼下がり、石造りの地べたに平伏する親子の前に、一人の女神官が立っている。薄いピンクに毛先だけが白い髪をハーフアップにした彼女は、まだ少女と言ってもいい年頃だ。しかし、この国では聖職者である彼女は全ての諍いごとの調停者でもある。多くの見物人が静かに彼女の裁きに注目していた。  彼女がこの街の関所で見掛けたのは、住民達がある親子を咎めていたところ。幼子が屋台のパン屋でパンを盗み食べたらしい。辺りは忽ち見物人が集まる騒ぎになってしまっていた。 「グロリアス典範3節、”この世の全ての善も慈悲も天上におわします神のもの”。この聖杖によってあなたの罪は神へと伝えられます。神が怒りしとき、その怒りはこの聖杖の震えによって示されるでしょう」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!