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彼女が言葉と共に揺らしたのは彼女の身長と同程度の杖だ。細長い持ち手の上に、U字型の銀の装飾と鈴が付いている。
シャンとした音と共に杖を差し出す。
「神よ、かの者の罪をおはかりください」
誰もが緊張して見守る中、杖から一筋の光が天へと昇り、雲の中に達してから降りてくる。
杖は微動だにしなかった。
彼女は立ち上がると、親子の手をそれぞれとった。
「安心なさい。あなたには更生の余地があると神がお認めになりました。ーー神よ、彼らに祝福を」
彼女が祝詞をあげると、柔らかな風が周囲を通り抜けた。一拍置かれて、街中に鈴の音が鳴り響く。
「これが祝福か!」
見物している街の人は喜びの声をあげた。
彼女は自らの荷を解くと、パンを取り出して親子に分け与えた。
「あなた達の未来に、幸あれ」
これは神官である彼女の最後の裁きの物語である。
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