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あの日、帰りのバスの中で手を繋いだまま眠るハルキに、気づかれないように泣いてしまった記憶が蘇る。離れるのが寂しかった。どれだけ思い出があろうとそばに居ない事実が、悲しかった。
思い出しただけで、すこし目が潤んでしまう。
ガラスから飛び出てきたハルキが、私を抱きしめて囁く。
「ただいま」
北海道は、ハルキにとって帰ってくる場所になったらしい。たった一つの言葉が、私を喜ばせてしまう。
「おかえり」
「二つ帰る場所があるってすごくない?」
「すごいよ、でもさ、私も二つあるんだよね」
「知ってる」
「ふふ、したっけ、今日はどこ行く?」
自然と手を繋いで、今日のデート先を相談する。何度も行き来するうちに決めることもなくなった。普通の恋人たちのように、行き当たりばったりのデート。私たちの関係性が深くなったようで、つい歩く胸を張ってしまう。
「その前にこれ」
ハルキがリュックから取り出したのは、小さいペンギンのぬいぐるみだった。手には、雪だるまを持っている。
「かわいいね」
「プレゼント」
「え?」
もう一つ取り出したかと思えば、それはアザラシのぬいぐるみ。手には、ペンギンと同じように雪だるまを持ってる。
「やっぱり離れる時、寂しいみたいだから」
「気づいてたの?」
「当たり前だろ」
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