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* * *
初めまして、が空港だなんて正直怖かったと思う。私も恐る恐る、声を掛けたし……
「ハルキ……くん」
通話越しで何度も呼んだ彼の名前を、呼び捨てにできずに、最後に掠れがちな「くん」を付けしてしまった。私の顔を見た瞬間、笑顔を綻ばせて、ハルキは駆け寄ってくる。ネイビーのコートは、私の真っ白なコートと並ぶと、まるで夜と雪みたいだと思った。
「ユキ、おはよう!」
初めまして、ではないんだという思いと、ハルキがまっすぐ見つめて、迷わずに名前を呼んだことに胸がじーんっと熱くなる。
「おはよう、ハルキ」
私のハルキくんと呼んだ声をなかったことにして、改めて対面での初めましてをやり直す。最初の呼びかけはそもそもハルキには、声が届いてたかどうかすらわからないし。
強く抱きしめられた衝撃に倒れそうになりながら、力を込めて踏ん張る。ハルキは嬉しそうにくるくると私の周りを回って、私の存在を確かめるように何度も名前を呼んだ。
「ユキ」
「聞こえてるよ、もう!」
そんな様子のハルキに、いつもの通話の時の調子を取り戻す。ドキドキとしていた緊張感は、まだ背中を強張らせていたけど。
「じゃあ、行こっか!」
するりと自然のように手を繋がれて、カァっと身体中に熱が回る。触れている。ハルキの手に触れているという事実に、めまいがした。
いつも声だけで、文字だけで繋がっていたのに。今は、肌と肌が触れている。
会うことが決まってからどこに行くか、何度も何度も二人で考えた。ハルキが「私の住む街を見たい」と言ったから、雪が降る中、高速バスで移動する。
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