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隣り合わせに座った席でも、手は繋がれたままでじんわりと汗をかいてきてる。恥ずかしさに少しだけ指を離せば、ニコニコとした笑顔で絡め取られた。
「ユキの街どんなとこなんだろってずっと思ってた」
「なーんにもないよ」
「雪はあるだろ」
どっちのユキか、悩んで、脳内で雪に変換する。雪なんてあったところで、寒いだけだし。
「雪があったところでさ、何もいいことないじゃんか」
「俺はいっぱい積もった雪を見たかったの! ほら、めちゃくちゃ、壁になってる!」
道路脇に積み上げられた壁のような雪をはしゃぎ見つめるハルキに、こっそりため息をつく。ハルキが隣にいること以外、私にとっては何にも変わり映えのしない景色だ。
バスは順調に私たちを乗せて、私の地元へと向かっていく。温泉でもと思っていたが、ハルキに却下された。シンシンと雪が降り続いて、体の奥まで冷やしてしまいそうなのに、バスの中はやけに暑くて額からも汗が出そうになる。
ハルキの隣に居る間だけでも、完璧に可愛い私でいたいのに。
「がっかりした?」
「へ?」
「それとも、一人ではしゃいで鬱陶しかった?」
黙り込んで外を見つめていた私に、何を勘違いしたのかハルキがぽつりと小声で囁く。何に対して? と問おうとすれば、心配そうな顔で私を見つめていた。
「なんもだよー」
「そっか、ユキ急に黙ったから心配になっちゃった」
「だって、ハルキが隣に居るのまだ慣れないんだもん。緊張しちゃうしょ」
「俺だってドッキドキだけどね」
ふふッと笑ってから、ハルキはまた窓の外を眺め始める。私もハルキの横から覗き込めば、いつもの白波が立つ海が広がり始めた。
「雪と海ってだけですげーキレイ」
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