今日も胸の中で降り積もる

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 私には無い感想に、ふぅんっと言葉が漏れた。ハルキが楽しそうなのは、私に会えたからだと自負していいのだろうか。つい、緩む口元を空いてる手で押さえて誤魔化す。 「でも、いつもユキが見てるもの見れるの、本当に嬉しいんだよ」 「なにそれ」 「だって俺らって性格は知ってるけど、知ってることなんて声と性格くらいだろ。どんなところで育って、どうしてそう考えるようになって、とか知りたいじゃん」  ほわんっと胸が熱くなった気がする。どんなところで育って、か。私だってハルキの育った海の街を知りたい。同じ海と言っても、寒空の下雪が降り頻る私の街の海と、ハルキの見ている海はきっと違うだろう。 「でも、北海道の道って本当にこんなまっすぐずっと続いてるし、広いんだな。雪積もってても、俺の知ってる大きい道くらいの幅あるんだけど」 「雪が溜まっていくから広いみたい、だね」  私は、この北海道の道しか知らない。北海道から出たことがないから。雪が降り積もるこの光景しか、知らないのだ。  私にとっては、この光景がこの世界の全て。そりゃあさ、ネットで他の地域の写真とか、動画とかは見たことがある。スマホは私に、私の見てる世界以外を次から次へと流し込んでは、それだけじゃないよと教えてくれるけど。それでも、体感できるのはやっぱり、この寒い雪が降り頻る世界だけなのだ。
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