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「雪だるま作りてー!」
「次のバスの乗り換え、少しだけ間開くから作る?」
「まじ? やろやろ」
「いいよ」
バスの乗り換え待ち、道端の積もった雪を手で握りしめる。私は、雪が染みない防水対応の手袋だけど……ハルキの手袋は毛糸で編まれた暖かいけど、濡れたら大変なことになりそうな手袋だった。
「あ」
を言う前に、ハルキは躊躇なく雪を掴み取る。手袋の糸に絡まって、雪は塊を作る。むぎゅむぎゅっと握って、丸にしているけど、毛糸に絡まってどうしても歪になっていく。私はコロコロと転がしながら雪玉を大きくしていれば、ハルキがピタリと動きを止めて呟いた。
「めっちゃしみてくるんだけど……」
「そりゃあそうでしょ」
「しばれるー!」
雪玉を地面に置いてから、わざとらしくブルブルと震えて声を出す。今時しばれるなんて言わないよ、と言いかけてやめた。楽しんでるならそれでいい。
雪玉を二つくっつけて、雪だるまを作る。その辺に落ちていた木を拾い上げて、手を付けてあげれば上手くできたと思う。ハルキは手袋を外して、素手でくるくると丸め始めていた。
「ひゃっこいでしょ」
「うん、ひゃっこい」
そう言いながらも、辞めはせずに少し歪な雪だるまを完成させる。バス停の横に二人の雪だるまを並べれば、ちょこんと待ってるみたいで可愛かった。
「待って待って、写真に残す」
「私も撮る」
手袋を脱いでポケットに乱雑に突っ込む。そのまま、スマホを取り出して、ハルキとの記憶を一ミリも逃さないように写真に残す。
「待って全然、手が動かない!」
「私撮ったの送るよ」
ハルキは手をぐーぱーぐーぱー無理矢理に動かしながら、スマホを操作しようとするも震えている。わざとらしく「もー」なんて言いながら、手袋を脱いで両手で温めてあげれば、ふふっと笑い出した。
「なんか、いいな。普通に一緒の地域に住んでるみたい」
「え?」
「デートだから観光がいいかなとも思ったんだよ俺。でも」
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