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「岸野。今日、この後予定ある?」
「え」
「あるなら、いい」
「あ、別にないよ?うん」
「そうか?無理すんなよ」
「大丈夫、びっくりしただけ。予定はない」
「何でびっくりするんだよ、誘っただけじゃん」
「だって、」
「だって何だよ」
「‥‥嬉しくて」
「え」
「川瀬とはバイトで絡まないシフトだし、
大学でも取ってる講義が違うし。
全然会えないから寂しかった‥‥」
「おい、それって」
「ん?」
「俺、期待してもいい?」
「何を」
「はあ、マジか‥‥」
「だから何を」
「岸野、どこに行きたい?」
「そうだなあ」
「俺はお前と2人きりになりたい」
「え、それって」
「だって寂しかったんだろ?」
「寂しくて死にそうだった」
「そこまでかよ」
「ねえ、2人きりって具体的にどこに行く?」
「俺に言わせるのか」
「だって、」
「ん〜、言ったら着いてきてくれるか」
「川瀬とならどこにだって行くよ」
「すっげえ恥ずかしい」
「何で」
「俺がどれだけ岸野に会いたかったか、
お前知ってた?」
「ひゃっ」
「何だよ、変な声出して」
「だって、川瀬が」
「俺が何だよ」
「‥‥僕だけじゃないんだよね」
「何が」
「会いたくてたまらなくて、眠れなかった」
「おい」
「何」
「そんな時は電話してこいよ、行くから」
「夜中だよ?深夜1時とか」
「遠慮すんなよ、自転車で行くし」
「川瀬、寝てたら悪いなって思って」
「俺だってそんな夜はある」
「え、悩みでもあるの?聞くけど」
「ないない。お前のこと以外は」
「僕に対する悩み?何が不満なの」
「不満じゃない、どうしたら俺の気持ちが
伝わるかを考えてる。いつも」
「僕だって同じだよ、川瀬のことをいつも
考えてる‥‥こんなに他人のことを考える
なんてことないよ」
「岸野」
「何」
「一応訊くけど、お前俺のこと、」
「え、あ、ごめん。迷惑?」
「迷惑な訳ないだろ、もっと素直になれよ」
「ホント?いいの?」
「いいよ、腹を割って話そうぜ」
「じゃあ、話すね」
「うん」
「僕は川瀬が大好きです」
「うわ」
「何、そんなに驚くこと?」
「いや‥‥嬉しすぎて衝撃が半端ない」
「川瀬は?僕のことどう思って、」
「大好きに決まってるだろ」
「やっぱり?!」
「何だよ、気づいてたのか」
「うん。でも言われたら嬉しいもんだね」
「ああ。で、この後どうする?」
「2人きりになれる場所かあ」
「うちで焼肉でもするか?肉買って」
「それもいいけど」
「何だよ」
「その前にしたいことが」
「うん?」
「抱きしめて、キスして欲しいんだけど」
「‥‥お前、」
「何、恋人になるんだよね?僕たち」
「まあそうだけどさあ」
「川瀬はしたくないの」
「改めて言葉になると恥ずかしいな‥‥」
「僕はしたいよ、ずっとしたかった」
「どこでしたい?さすがにここじゃ」
「じゃあ、早く買い物して川瀬んちに
行こうよ。僕、我慢できない」
「おい、大丈夫かよ」
「素直になれって、川瀬言ったじゃん」
「まさかそこまでとは」
「川瀬も素直になってよ。僕のこと、
どれくらい好きなの」
「閉じ込めたくなるくらい、愛してる。
誰の目にも晒したくない。俺だけの
お前にしたい‥‥そう言ったらお前引くだろ」
「嘘」
「嘘じゃないし。俺だって我慢してきたんだ」
「嬉しい‥‥僕を離さないでね。僕も川瀬を
離さないから」
「あ、おい、くっつくな。こんなところで」
「いいじゃん、少しくらい。早く行こうよ」
「明日、講義出られるかな‥‥」
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