第6話(1)面倒事からの厄介事

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第6話(1)面倒事からの厄介事

             6 「はあ……」  ため息をつきながら部室に入る俺に紅蓮が声をかけてくる。 「遅かったじゃねえかよ」 「先生が遅刻は感心しないな~」 「誰のせいでこうなったんだと思ってんだよ!」  俺はいたずらっぽい笑みを浮かべる雷電に対して、思わず声を上げてしまう。 「へ?」  雷電が首を傾げる。 「へ?じゃないだろう……」 「ウチがなにかした?」  雷電が自らを指差す。 「ああ、たいへんなことをしてくれたよ」 「……なんだっけ?」 「……校内新聞を見ただろう?」 「ああ、掲示されてたし、電子版の方も見たよ」  雷電が思い出したかのように頷く。今時の校内新聞は電子版もあるのか……って、それはどうでもいいとしてだ。 「……なんだ? あの画像は?」 「画像?」  雷電が首を捻る。 「俺らしき人物が夜の部室棟で怪しい光を放っている画像だよ」 「あ~あれね」 「あれねじゃない、どういうことだ?」 「新聞部ちゃんが変化した晴嵐ちゃんをスマホで撮影しちゃったんだよ」 「それについては俺も把握している」  俺は頷く。 「あれをそのままにしておいたらマズいじゃん?」 「大いにマズいな」 「だから……ちょちょいっと画像の加工と編集をね……」 「それでどうして俺が発光することになるんだ⁉」 「いや、自分のスマホにまったく無関係な、記憶の片隅にもないような画像しか残っていなかったら、新聞部ちゃんも不思議に思うじゃん? あの場に村松っちがいたのは間違いのないことだからさ。これは特ダネだ!って納得してくれるかなって……」 「記憶の片隅どころか改ざんだろうが!」  俺は再び声を上げる。 「まあ、少し落ち着けよ、村松っちゃん……」  紅蓮が口を開く。 「これが落ち着けるか!」 「面倒な新聞部の目は誤魔化せたからいいじゃねえか……」 「……全然誤魔化せていない!」  俺は首をブンブンと左右に振る。 「え?」  紅蓮が首を傾げる。 「学校中に俺の謎めいた行動が広まったんだぞ?」 「ああ……」 「校長と教頭に呼び出されて……より面倒なことになったんだ……!」 「教師が呼び出しを食らうとは……こりゃまた傑作だな」  紅蓮がくくっと笑う。 「傑作じゃない……!」 「随分と大ごとになっていたんだな」 「他人事のように言うな」 「そりゃ他人事だからな」  紅蓮がわざとらしく両手を広げる。 「お前な……」 「まあまあ、とりあえず座りなよ」  紅蓮が空いている席を指し示す。 「……ったく」  俺は憮然としたまま、席に腰を下ろす。 「……それで?」 「ん?」 「校長と教頭にはなんて説明したんだよ?」  紅蓮が尋ねてくる。 「……『まったく記憶にございません』で押し通したよ」 「政治家かよ……」  紅蓮が失笑する。 「そう言うしかないだろう?」  発光した記憶などないからな。嘘の答弁はしていない。 「それにしても……もうちょっとなにかあったんじゃねえか?」 「例えば?」 「……生まれつきの体質なんですとか」 「人を歩く怪奇現象にしてくれるなよ」 「生まれつきなら何も言われねえだろう」 「かなり大きめの病院を紹介されるだろうな」  もしくは政府の研究機関に引き渡されるとかな。 「それはそれで面白えだろう」 「面白くない」 「……解放されたということはお咎めなしということですね」  疾風が淡々と呟く。 「お咎めを受けていたようなものだが」 「それよりも」 「うん?」 「遅刻です。先生には何らかの罰を受けてもらいます」 「は?」 「購買でなにか買ってきてくれよ」 「いいね~♪」  紅蓮の言葉に雷電が笑顔を浮かべる。 「ちょ、ちょっと待て」 「待ちません」  疾風が眼鏡をクイっと上げる。 「そもそも遅刻っていうのはなんだ? 生徒はともかくとして、顧問がそれを守る必要はないと思うんだが……」  俺は慌てる。疾風が笑みを浮かべる。 「……冗談ですよ」 「分かりにくい冗談はやめてくれよ……」  俺は胸を撫で下ろす。 「……それはそれとして……」 「なんだ?」 「杞憂で済めば良いのですが……」 「なんだよ?」 「面倒事は避けられましたが、厄介事に巻き込まれるかもしれません……」 「? どういうことだ?」  俺は首を捻る。 「すぐ分かります……」 「同好怪っていうのはここね!」 「⁉ な、なんだ⁉」  おかっぱ頭で丸眼鏡をかけた女子生徒が部室に入ってくる。 「オカルト研究会の者よ!」
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