♯04. デリケート R

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「あ、そうだ」待って、と引き留めた氷堂の声。「前部長の引継ぎ終わったから、明日から打ち合わせの予定入れておいて」 「……は?」驚いて振り向いた。すると相変わらず、……スーツを着こなす小栗旬も顔負けと思える、あんた、スーツのCMに出てくるイケメンですか、ってくらいにバチクソイケメンのあんたは、むしろ、きょとんとした顔で、 「え。引継ぎなんて一日で終わらすのが常識でしょ?」  いやいやいや。引継ぎなんて、ひどいひとだと一か月かかっても終わらないから……!  あんたの常識はほかのひととは違うのよ!! 「……分かりました」やむなく首肯。「十時から氷堂さん、予定空いていましたよね? 入れておきます……」  うちの会社はパッケージソフトでスケジュールもタスクもメールも一括で管理している。社員であれば、相手が誰でも強制的に予定を入れられるようになっており、氷堂はそのことを言っている。 「うん。よろ」そしてあたしに手を振った氷堂は、次は、田中まゆみさんに声をかけていた。――髪切った? なんかイメージ変わったよね。……そういうところが嫌いで……。  ――大好きなのよ。馬鹿。
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