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出会い
朝から降り続いている雨が、粉雪に変わり始めた12月16日の夕刻。
ホテル フォルトゥーナ東京のロビーは、たくさんのカップルで賑わっていた。
金曜の仕事終わりとあって、皆、恋人と過ごす週末への期待に笑顔がこぼれている。
吹き抜けのロビーの中央に位置する、煌びやかなクリスマスツリーは存在感抜群で、記念撮影する人で列が出来ているほどだった。
瑠璃は、駅からの連絡路を駆け抜けてホテルの2階に入ると、吹き抜けから1階を見下ろした。
メインエントランスのすぐ脇の大きな柱にもたれ、腕時計に目を落としているスーツ姿の和樹を見つけると、ゆるやかなカーブを描く階段を急いで下りる。
「遅くなってごめんなさいっ」
息を切らしながら声をかけると、和樹はいら立ちを隠さず瑠璃を振り返った。
「遅い!ったく、何時だと思ってるんだ?」
「ごめんなさい。急に残業することになって…」
「いいから早く!予約の時間とっくに過ぎてる」
「予約?予約って何の?」
さっさと歩き出そうとした和樹は、ついて来ない様子の瑠璃に思わず舌打ちする。
「ヘアメイクと衣裳のレンタル!その格好じゃ、パーティーに出られないだろ」
「パーティー?え、何のこと?」
はあ…とため息をついてから、和樹は瑠璃の腕を乱暴に掴む。
「いいから早く!説明はあとだ」
「いや!」
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