花火大会

9/9
前へ
/232ページ
次へ
「それでは、我ら企画広報課の花火大会イベント、大成功を祝して」 「かんぱーい!」 小さな宴会場を借りての、ささやかな打ち上げ。 「清河さん!ビールお注ぎします」 「清河さん!お料理もどうぞ召し上がってください」 「清河さーん、写真撮りますよー」 賑やかな加藤や山下達男性社員に取り囲まれ、清河は終始にこやかに破顔していた。 次の日、いよいよ清河とはお別れだった。 車に乗る前に、瑠璃達、企画広報課のメンバーの他に、一生もお見送りする。 「清河様。本当にありがとうございました。当ホテルで清河様の作品を扱わせて頂けたこと、とても光栄に思います」 ありがとうございました、と一同揃って頭を下げる。 「こちらこそ、おおきに。楽しかったですわ。なんや、夢見てた感じですわ。ええホテルですなあ。また来させてもらいます。それまで元気でおらんとな」 照れたように笑う清河に、皆も笑顔で頷いた。 「お嬢ちゃん達、これ」 やがて清河は、瑠璃と奈々に何かを差し出す。 それぞれ手のひらに乗せられたのは、ガラス玉のネックレスだった。 「わあ、きれい…」 瑠璃には、深い群青色に細かく金を散らしたデザイン、奈々は、水色に虹を描いたデザインだった。 きっと二人のために作ってくれたのだろう。 「こっちは瑠璃色の星空、ほんでこっちは七色の虹の空や。瑠璃ちゃんと奈々ちゃんやからな」 「え…あっ!」 世界でひとつの、瑠璃達への想いがこもった作品。 瑠璃と奈々は、目を潤ませて清河に寄り添う。 「ありがとう…清河さん」 清河は、そんな二人の頭に優しく手を載せて何度も頷いていた。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1761人が本棚に入れています
本棚に追加