ピンチ

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「ああ、そうだ。うん…」 電話に応答しながら、一生は早瀬のデスクから目が離せなくなっていた。 お互いの肘が触れ合うほど近い距離の早瀬と瑠璃は、何やら小声で話しては、楽しそうに笑っている。 (なんだ、あいつ。鼻の下伸びてるぞ。いつものカタブツキャラはどうした?) 「もしもし?聞こえますか?」 「ああ、うん。大丈夫だ」 電話の会話がおろそかになってしまう。 なんとか要件を済ませて、電話を切った。 そのあとも、ちらちらと視線を向けながら二人の様子をうかがっていると、やがて瑠璃が早瀬に、内線電話をかけてもいいかと聞いた。 もちろん、と早瀬が答えると、瑠璃はお礼を言って、手早くボタンを押す。 「あ、もしもし、奈々ちゃん?うん、大丈夫よ。ありがとう。あのね、今ファイルをフォルダに入れたから、あとで確認してくれる?例の…」 そこまで言うと、急に受話器を耳から離す。 ん?と思って見ていると、受話器から、うおー!瑠璃ちゃーん!と、野太い声が一生の席まで聞こえてきた。 あまりの声の大きさに、瑠璃は受話器を耳から離したまま返事をする。 「あ、は、はい。皆様、ご迷惑おかけします」 「大丈夫ー?瑠璃ちゃーん!早く戻っておいでよー!」 「あ、ありがとうございます。それではまた…」
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