ピンチ

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耳が痛くなる前に受話器を置いて、苦笑いする瑠璃に、早瀬が声をかける。 「相変わらず体育会系だなあ。大丈夫?あんなヤロー達に囲まれて」 「ええ。皆さんとってもにぎやかで優しくて。毎日すごく楽しいです」 「そう?それなら良かった。青木もいつも言ってるよ。瑠璃ちゃんと奈々ちゃんが来てくれて本当に良かったって」 「早瀬さん、青木さんと仲良しなんですか?」 「うん。青木とは同期なんだ」 「え?じゃあ早瀬さんもまだ20代?」 「そう。28だよ」 「えー!そんなにお若いのに総支配人付きの秘書なんて。ものすごく優秀なんですね、早瀬さん」 「いやー、そうでもないよ。たまたまだよ」 一生は、もはや二人の会話を聞くことにしか集中出来なかった。 (早瀬のやつ!何をヘラヘラと嬉しそうに。しかもサラッと、瑠璃ちゃんって言ったな。聞き逃さなかったぞ。何が瑠璃ちゃんだ。俺でも呼べないのに、なんでお前が瑠璃ちゃんなんて!) 思わず手にしていたボールペンで、ブスッと書類に穴を空けてしまう。 (だめだ、仕事にならない…) 一生は、大きなため息をついた。
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