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エレベーターで22階まで上がると、深紅のカーペットが敷き詰められた待合スペースに
『百合園女学院 同窓会』と書かれた受付が設けられていた。
母と姉に続き、瑠璃も芳名帳に記帳する。
と、誰かが近づいてくる気配のあと、聞き覚えのある声がした。
「まあまあ、美雪さん。ごきげんよう」
「佐知さん!ごきげんよう」
艶やかな着物姿で母の美雪に声をかけてきたのは、母の旧友であり、和樹の母親でもある、澤山 佐知だった。
「佐知おば様、ごきげんよう」
そう言って、膝を曲げるカーテシーで挨拶をする姉のあとに、瑠璃も続く。
「ごきげんよう、おば様」
「ごきげんよう。まあ、藍ちゃんも瑠璃ちゃんも、今夜は一段と美しいわね」
美雪は佐知と同じく和装だったが、藍と瑠璃はイブニングドレスにした。
妊娠中だから、着物はやめてサラッと着られるドレスにするという姉に、瑠璃も便乗したのだった。
「ご主人の正装も、とってもすてきね。お二人、本当にお似合いのご夫婦だわ」
佐知の言葉に、藍の夫の高志も笑顔でお辞儀をする。
「ありがとうございます。奥様にも久方ぶりにお目にかかれて光栄です。でもよろしかったのでしょうか?今日は女学院のご婦人方の同窓会ですのに、私のような輩がお邪魔しても?」
「まあ!」
佐知は口元を袖で押さえながらふふっと笑い、高志に頷いた。
「もちろん、大歓迎ですわ。同窓生のご家族もご一緒にとお招きしていますから。それにパーティーは、男性がいてくださった方がより華やぎます」
「そういえば、佐知さん。同窓会の会長になって初めてのパーティーよね?色々段取りなど大変だったでしょう?」
母の美雪が思い出したように言う。
「いいえ、準備するのはとても楽しかったわ。この日を心待ちにしていたのよ。皆様もどうぞ楽しんでいってね。あ!藍ちゃんはくれぐれも無理のないようにね。横になって休めるようにお部屋も用意してあるから、遠慮なく使ってね」
「まあ!おば様、そんなお気遣いまで。ありがとうございます」
藍と高志は、恐縮して頭を下げた。
「いいのよ。お身体お大事にね。では皆様、また後ほど」
品の良いお辞儀をしてから、佐知はまた別のグループの方へと去っていった。
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