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ウィンドシア
湖上から内陸に入ると左側にシカゴの摩天楼が見える。更に高度を落としていくと、突然機体が上下に激しく揺れ始めた。
「きゃあ!」
その時、飛行機が大きく落下して周りから悲鳴が聞こえる。私は隣の母の手をギュッと握った。
「低気圧の影響で気流が悪いのね。大丈夫よ。飛行機は頑丈だから」
その声に頷きながらも、激しく上下に揺れる機体に心臓の鼓動が高まる。
その時、飛行機が再び大きく落下し始めた。身体がシートから浮いて、地面があっという間に近づいて来た。エンジンの音が一気に大きくなる。
「ウィンドシアよ。着陸復航するわ」
その意味は分からなかったけど母の声はとても冷静だった。でも機体はまだ激しく落下している。
『客室へ!衝撃に備えて!』
そのアナウンスは突然だった。母が「えっ? 嘘!」と大きな声を上げた。
「ママ」
振り返ると母の顔は真っ青だ。
前からCAさん達の叫び声が聴こえて来た。
『乗客の皆さん! 頭を下げて! Head Down! 頭を下げて! Head Down! 』
「陽毬、頭を下げて! 墜落するわ!」
母が私の頭をギュッと押してくる。その瞬間、激しい衝撃が襲って来た。
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