熱気

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 ちょうど1週間前だった。和男と妻の聡子が納豆をおかずに朝食をとっていたときだった。前に座っていた聡子が箸の手を止め、テーブルに置きっぱなしの新聞紙の間からチラシを1枚引き抜いた。聡子は和男の顔から腹のあたりまでゆっくり見下ろし静かに言った。 「あなた...このままだと腐るわよ...」  ドキッとする和男。納豆の糸がいつも以上にねばっこい。心なしか臭いもきつくなってきた。 「今日の納豆、コクあるね。栄養満点だ。ハハハ...」  和男は渇いた笑いでその場をごまかす。和男はチラリとチラシに目をやった。スポーツジムの広告であった。力強いゴシック体が和男の目に飛び込んだ。 『さあ、今だ!そんな貴方も遅くないっ‼︎』  チラシのガブリ寄りだった。和男は一気に押し込まれ、チラシに心を奪われた。和男はその場を一旦やり過ごしそそくさと朝食を食べ終える。聡子が皿のあと片付けに台所に立った隙、和男はすかさずチラシを手に取った。和男の目が皿になる。和男はチラシをたたみポケットに突っ込みながら、何事もなかったように聡子の背中に声をかけていた。 「今日は、出かけようかな。昼はいらないからネ」  和男の言葉はいつにも増してこびていた。
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