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1時間後、和男はジムの受付の前にいた。
女子学生のバイトだろう。それもまだ新人か。笑顔が少しぎこちない。
「いらっしゃいませ。どんなご用件ですか?」
和男を一瞥、声のトーンがフラットだ。
「あっ、こっ、これ見て来たんですけど...」
和男がポケットのチラシをチラリと見せた。女の子の眼が輝いた。固かった笑みも嘘のようにほぐれだす。
「新規のご入会ですね!ありがとうございますっ!」
声にハリが出てきた。語尾もくぃっと跳ね上がる。眩しい笑顔が和男を見つめた。たじろぐ和男、目が一瞬泳いだ。が、負けじと和男はチラシを開き、ここぞとばかりに呟いた。
「こっ、こんな僕でも遅くない...」
一瞬間が空いた。女の子の目が和男を上から下まで移動する。煌めく瞳が和男を捕らえて逃さない。
「はい!もちろんですっ!」
館内中におおらかな声が響いていった。
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