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6.お宅訪問!
――なんでこんなことに。
お屋敷といえばこんな感じ、と思える大きな建物を見上げて、僕は口をぽけっと開けたまま遠い目をした。
今日も今日とて職場まで会いに来たセレスは、「この前の礼がしたい」と言い出して、その内容も話さず僕を馬車に乗せた。
どこに向かうのかと尋ねれば自分の家だと言う。思わず無礼にも「は?」って聞き返してしまったけど、僕は悪くないと思う。
すでに向かっていると分かっていながらも、僕は貴族の家になんて行けないと抵抗した。平民どころか他人から見れば底辺の僕には怖すぎる。
けれどセレスは「大丈夫だ」の一点張り。説明が少なすぎない!?
セレスにはこういうところがある。会いはじめた最初の方はさすがに頑張っていたようだが、普段の彼は最低限の言葉で会話するのがデフォルトだ。
本人に悪気はないんだろうけど、だからこそ『孤高の』とか言われちゃうんだろう。セレスはそれさえ全く気にしてないから、どうでもいいけどさ……
そんな性格に慣れてきた僕は、なんとか目的地に到着するまでにあの手この手で、『大丈夫だ』という理由を聞き出した。
ふぅ。僕ってすごい。
セレスはカシューン侯爵家の生まれらしいが、自分に魔法の才能があったことで早々に家を出て研究者の道を志した。次男だったし、貴族らしい人付き合いに向いていない性格だと家族も分かっていたそうで、円満に侯爵家とは距離を置いているとのことだ。
したがって、いま向かっている家はセレス個人の持ち物である。侯爵家と聞いて一旦震え上がった僕はやっと安心したけど、それはそれで……
まぁいいか。家族がいないなら変にご挨拶とかしなくて済むし、「どこの馬の骨!」なんて罵倒される心配もないってことだ。
そんなこんなで、僕の家よりはだいぶ広いんだろうな〜、一軒家だもんな〜〜なんてお気楽な考えで到着したのだ。
セレスの持つ、お屋敷に。
「でか……」
「ウェスタ、こっちだ」
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