1人だけ見えないクラス

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「高島がいない」 「さっきいたよ」 「いや、いないよ」 僕らは、宿泊研修で旭川に来ていた。夜、肝試しをしている時に、高島がいなくなった。 「ギャー」 遠くで、女子の声がする。走って声のした方に行く。1人の男性が草むらに横たわっていた。顔を見ると、高島だった。首元に手をやる。脈がない。死んでいる。 一体だれが、、、、 —————————————————— 僕は中学3年生。僕の産まれた街は、人口3,000人。小学校も中学校もひとつしかない。高校はない。同級生は、ほとんどが、保育園からの、付き合いだ。だから、みんなの誕生日、血液型を知っている。イジメもない。 僕はクラスの学級委員長。今回の研修旅行のしおりを作った。なるべく、仲が良い人を同じ班にした。みんなとても楽しみにしていた。それが、こんな事になるなんて、、、、、、 高島はクラスでも、頭が良く人気者だ。誰かに恨まれてもいない。でも状況から見て、クラスの誰かが犯人だ。高島の遺体には、首にあざがあった。犯人は、おそらく男子だろう。 高島と行動を共にしていたのは、伊藤、加藤、中村、竹田の5人だ。このうち、伊藤と加藤は、おそらく犯人ではない。力がないし、性格的にありえないからだ。 中村は、クラスでも、1番背が高く運動神経がいい。竹田は背は高くないが、力はある。 警察が来た。クラスの全員が、事情聴取された。みな泣いていた。警察が帰った後、旅館に集められた。 「本来なら明日、朝帰る予定だが、警察の依頼で、明日も泊まる事になった。警察には協力する様に」近藤先生が泣きながら話した。 夕食が運ばれたが、皆無言で食べた。僕は風呂ひ入り、1人考えた。ぼんやりと、犯人が浮かんだ。部屋に戻り、みんなと話した。 「だれが犯人かな❓」 「自殺じゃないの❔」高橋が答える。 「いや、クビにアザがあったみたいだから、それはないよ」 「中村じゃね」矢萩が答える。僕も中村が犯人だと思う。 「とにかく、寝ようぜ、明日も泊まれるし」広瀬が言った。みんな同級生が死んだのに、他人事だ。なんだか寂しくなる。 「みんな起きろ」 近藤先生が、部屋にやってきた。 「何ですか❔」 「平栗まりこが死んだ」 「えっ」 みんな、広間に集まった。 「今朝6:00に旅館の外で、平栗が死んでいた。クビにアザがあった」 近藤先生が泣きながら言った。 平栗は、山際、矢萩、高橋と同じ班だ。だけど、女子が犯人なのは考えられない。 「犯人は出てきてよ」平栗友美が言った。友美はまりこと、従姉妹だ。 「いい加減にしてよ」山際が言った。楽しいはずの旅行が、2人も死んでしまった。僕は学級委員長として、クラスを少しでも、落ち着かせ様とした。 「とにかく、みんな部屋から出ない様にしよう。そうすれば、これ以上、被害はないはずだ」 みんな部屋に戻った。警察が来て、また全員事情聴取された。 「どうなってるんだ❔」矢萩が言った。「だから中村が犯人だって。平栗と仲悪かったから」広瀬が答える。「だからって殺すか、普通」高橋が呆れた顔で言った。 「とにかく、1人で行動するのはやめよう」僕は、精一杯考えて口にした。 昼食の時間になり、広間に集まった。ご飯は、変わらず美味しかったが、誰も話さなかった。それもそうだろう。2人も仲間を失ったのだから、、、、 部屋に戻り、みんなで大浴場に行った。浴槽は5つあり、露天風呂もある。風呂に入りながら、犯人の事を考えた。「中村が犯人だろうか?だとしたら、簡単すぎる」風呂には、中村も来ていた。中村は自分が疑われているのを知っている様だった。警察の事情聴取が1番長かったからだ。 夕食の時間になった。 「明日も、ここに泊まります。犯人が見つかるまで、泊まります」 「えー、着替えがないですよ」友美が口にした。「旅館の人に洗濯してもらうから大丈夫です」 旅館には、高島と平栗の両親が来ていた。号泣していた。 「みんな気をつけて、犯人が見つかるまで気を抜いちゃダメだ」高島のお父さんが大きな声で言った。 部屋に戻った。みんな疲れていた。外出出来ないからだ。疲れ果て、気がつくと眠っていた。 「大変だ、起きろ」 「何ですか❔」 「伊藤が死んだ」 「えっ、、、、」 僕は夢なのか現実なのか、わからぬまま、天井を見つめた。 旭川に来て3日が経った。まだ犯人の手がかりはない。ご飯はおいしい。ただ、また誰か殺されてしまうのではないかと、みんな怯えている。昼になり、居間に集まった。 「みんな、疲れてないか❔具合が悪い人は遠慮しないで、言ってくれ」 近藤先生が、こわばった顔で言った。 夜になり、居間で夕食を取った。みんな少しだけ元気を取り戻していた。僕もいつもより、沢山ご飯を食べた。 部屋に戻った。 「でも、誰が犯人なんだ❔」高橋が言った。 「中村に決まってるよ、あいつ、いつも俺を馬鹿にしてくるし」矢萩が答える。 「中村だよ」広瀬も、賛同した。 「決めつけるのは良くないよ」 「まあ、そうだね、、、」 3日目の夜が明けた。 「大変だ、またやられた」 近藤先生が部屋に入ってきた。 「小野ふじこが殺された、、、、」 「えっ、、、、」 僕らは飛び起きた。 居間にみんな集まった。警察も来ていた。 「非常事態です。4人目の犠牲者が出ました。みんな、昨日の行動を警察に話す様に」 近藤先生が、涙目で答えた。 「昨日、みんな何をしてたんだ‼️」 僕が叫んだ。みんな下を向いている。 「誰がやったんだ‼️」中村が叫んだ。 「お前だろう」矢萩が答える。中村は矢萩をつかみ、思い切り殴った。近藤先生が割って入る。 「とにかく、絶対に1人で行動しない様に。犯人が見つかるまでは、このホテルにとどまるから」 部屋に戻ると、手紙が置いてあった。 「俺は犯人を知っているぞ」 一体いつ誰が書いたのだろう❔さっきまで居間にみんないたはずなのに、わからない。第一知っているなら、教えて欲しい。 「中村は犯人ではない」矢萩が大声で言った。「何でだ❔」「いや、手が綺麗だった。締め殺したなら、手に傷があるだろう」「それは、わからないよ」「とにかく、中村は犯人じゃない。それだけは確かだ」「じゃあ誰なんだよ」高橋が叫んだ。「わからない」「とにかく、1人で行動しない様にしよう」 昼食の時間になった。近藤先生が暗い顔をしている。 「小野美子がやられた」 「えっ、1人で行動したんですか」中村が叫ぶ。「わからない」ただ、外で木に吊るされていた。 「犯人は、残念だがクラスの中にいる。ホテルの人は皆、先生と一緒にいたから、、、、」 犯人は、一体何が目的なのか?まさか全員殺すつもりなのか?その時だった。照明が突然消え、音声が流れた。 「絶対に許さない。いじめた奴を。皆殺しだ」音声は加工されており、誰かわからない。ただ女性の声だった。 犯人は女子なのか?いや女子が出来るはずない。だとしたら、犯人は複数だ。 「今のは、一体、、、、」近藤先生がそう言った瞬間、照明がついた。 近藤先生は、その場に倒れ込んだ。 「大丈夫ですか❔」中村が近づき、声をかけた。先生の苦労は計り知れない。クラスでこれだけ死人が出ているのだから。 「とにかく1人で行動しないで」先生は小さな声で言った。 部屋に戻った。「犯人は3人だろう」矢萩が言った。「何で❔」「これだけ、1人で行動しない様にしているのに、おかしい。3人以上はいる」 「いじめなんて、あったか❔」高橋が言った。「僕らが知らないところで、あったのかも」広瀬が答えた。 「とにかく、1人で行動しない様にしよう」 その後、みんな疲れ切って、部屋で昼寝をした。 夕食の時間になり、居間に集まった。 近藤先生の姿がない。 「近藤先生は、体調を崩し病院に行っています。帰ってくるまで、何かあったら俺まで言ってきてくれ」副担任の布袋先生が言った。 夕食は、いつもの様に美味しかったが、誰も話はしなかった。当たり前だろう。仲間が、これだけ死ねば、、、 夕食が終わり、みんなで久しぶりひ風呂に言った。中村も来ていた。 「この前は悪かった」矢萩に謝った。「もう、いいよ。俺も悪かった」矢萩が言う様に、中村は犯人ではない、そんな気がした。 風呂から上がり部屋に戻った。 「ジャーン」矢萩が袋からビールを取り出した。「飲もうぜ」「まずいよ」広瀬が言う。「飲まないと、気が狂うよ」「それもそうだな」高橋が賛同する。 「乾杯」みんなでビールを飲み、深い眠りについた。その夜、恐ろしい夢を見た。仲間が殺されて、僕1人になる夢を、、、、、、 「大変だ」布袋先生が部屋に飛び込んできた。「中村がやられた」「えっ、本当ですか?」「ああ、外の木に吊るされていた」「な、なんで、、、」矢萩の顔から色が消えていく。「とにかく、居間に集まってくれ」 居間に行くと、女子が皆泣いていた。中村はクラスで1番人気があった。「やだよー」平栗が叫んだ。「このままだと、みんな殺されてしまう」橋川が言った。橋川は女子で1番冷静な奴だ。そういえば、橋川は中村にいじめられていた。怪しいといえば、怪しい。 「警察は何やっでるんだ❔」矢萩が叫ぶ。警察なんて、あてにならない。こんなに殺されているんだ。自分達で犯人を見つけなければ、、、、 「僕が犯人を見つけてやる」気がつくと、叫んでいた。 「秀、、、頼むよ」「秀しかいない」「頼むぞ」僕はIQ160ある。必ずこの事件を解決してみせる。 夜が明けた。酒を飲んだせいか頭が痛い。内緒で持ってきた、タバコを外で吸う。僕はみんなが思っている様な優等生ではない。髪も染めている。 「おはよー」平栗が部屋に来た。 「秀、ちょっと」 「何❔」 「付き合ってほしい。好きだから」 「えっ、、、、、いいよ」 こうして、こんな時に、僕は平栗朋美と付き合う事になった。 居間に行くと、警察がいた。 「まだ、犯人の手がかりは、ありません。ご協力お願いします」 何が協力だ。いなくていい。 それにしても、近藤先生は、大丈夫だろうか❔ 朝食を取る。流石にホテルのご飯も飽きてきた。普通のご飯が食べたい。平栗は、朝からベタベタしてくる。周りの視線が気になる。 「付き合ったの❔」 女子が聞いてくる。 「う、うん」 「こんな時に」 橋川が言った。 確かに、こんな時だ。付き合ってる場合じゃない。でも気持ちが楽になったのも、確かだった。 「近藤先生は、しばらく入院することになった」布袋先生が言った。確かに、これだけの事があれば、神経がやられても、仕方ない。 「あと、明後日、札幌に帰る事になった」「犯人がわかったんですか?」橋川が言った。「いや、亡くなった生徒の葬式をする為だ」そうだった。山際が亡くなって、もう5日経っている。葬儀には、遅いくらいだ。 「だから、今日、明日は何もない様に気をつけてくれ。犯人探しは警察に任せよう」 警察はあてにならない。だから、僕が探し出すしかない。 部屋に戻った。「明後日帰るのか、それまで生きてられるかな❔」矢萩が言った。「確かにな」高橋も答える。「とにかく、1人で出歩かない様にしようぜ」広瀬が言った。 みんな、不安になる気持ちも分かる。僕も不安だ。部屋でみんなで、トランプをした。 「秀、外に行こうよ」朋美が部屋に来た。「わかった」 外に出て、湖を見た。綺麗だ。嫌なことを忘れさせてくれる。 「タバコちょうだいよ」 「えっ、ないよ」 「嘘つかないで、秀タバコ臭いよ」 「わかった」セブンスターを手渡した。朋美は慣れた手つきで、火をつけた。「美味しいね」吸い終わると、「キスして」朋美に優しくキスをした。僕のファーストキスだった。 部屋に戻った。高橋、矢萩、広瀬が倒れている。 「大丈夫か❔」3人とも息がない。死んでいる。すぐに先生を呼んだ。 「何で」布袋先生は、3人の姿を見ると、その場に崩れ落ちた。 居間にみんな集まった。 「広瀬、矢萩、高橋がやられた。とにかく、部屋から出るな。お願いだ」布袋先生は、泣きながら言った。 「誰が犯人なんだ❔何が目的なんだ❔」橋川が叫んだ。そう、一体何が目的なのか?いじめられた恨みと言っていたが、殺された全員がイジメをしていたとは、思えない。 「みんな、もうI日耐えよう」僕にはその言葉しか見つからなかった。朝食を取る。もう味なんてしない。何を食べているのかさえ、わからなかった。 お腹が痛くなり、トイレに向かった。用を足し、ポケットに手をいれた。じめっとした感触があった。手に「血」がついていた。慌てて手を洗った。一体何で、、、、 部屋に戻る途中の廊下に、朋美がいた。「どうしたの、顔が真っ青よ」 「いや、何でもない」 「ごめん、少し具合が悪いから部屋で休む」「わかったわ」 部屋には、僕1人だ。他の人は死んだのだから。 冷静になって考えてみた。ひとつの最悪な仮説が思いついた。それは、僕が犯人ではないか?と言う事だ。ポケットに血がついている事、部屋の他のメンバーが死んだ事。でも間違いなく、殺した記憶はない。だが、嫌な予感は消えなかった。 部屋で気がつくと寝ていた。亡くなった父の夢を見た。 「秀、もうこっちにこい」「もう、いいから」目が覚めると、頬に涙の跡があった。 昼食の時間になり、居間に行く。布袋先生は疲れ切っている様だ。橋川が近づいてきた。「上手くやってるよね❔」「何が❔」そう言うとニヤリと笑った。 昼食は、ラーメンだ。久しぶりだった。味を感じられる一品だった。しかし橋川の言葉が気になる。一体どういう意味なのか? 部屋に戻り、1人考えた。 「誰が犯人だ❔狙いは何だ❔」 朋美が入ってきた。 「秀、やられた」 朋美が倒れ込んだ。 「大丈夫か❔」 朋美を抱き起こす。 「犯人は、、、、」 朋美は、口から大量の血を吐いた。次の瞬間、グッタリした。 「朋美、、、、、」 首に手をやり、脈を確認する。死んでいる。「朋美、、、、」 朋美を抱き起こして、布袋先生の部屋に行く。布袋先生は倒れていた。背中にナイフが刺さっている。 「先生、、、、」死んでいる。 朋美を抱きながら、居間に向かう。みんなを集めた。 「朋美と布袋先生がやられた。みんな気をつけて。明日すぐに帰ろう」 「布袋先生まで、、、」加藤が言った。「もう、みんな生きて帰れないんじゃ」橋川が言った。 「そんな事ない。とにかく、なるべく同じ部屋にいて。動かない様に」 みんな、、、、近藤先生が現れた。 「先生、大丈夫なんですか?」 「何とかね」 「布袋先生と朋美がやられました」 「えっ、」  「広瀬、矢萩、高橋も」 「犯人の手がかりは❔」 「ありません」 「とにかく、動かないで。これ以上、犠牲者を出さない様に」 「わかりました」 男子は2つの部屋で集まる事にした。女子も2つだ。 「夕食まで、風呂に行こうぜ」加藤が言った。加藤はクラスで目立たない存在だ。何故か元気そうに見えた。 これが、最後の風呂だ。明日生きていれば、帰る事ができる。 夕食の時間になった。どうやら犠牲者はいないらしい。夕食は、しゃぶしゃぶだ。「いただきまーす」加藤が大声を上げる。やっぱりおかしい。加藤が犯人か? 夕食を食べ終わると、部屋に戻った。 「早く寝ようぜ、明日帰れるからさ」また加藤だ。 みんな疲れ切って、9:00に眠りについた。 「秀、起きて」橋川に起こされた。 「早く、行くわよ」手にはナイフが握られている。 「何やってるんだ」「いまさら何‼️みんな殺すんでしょ」 「えっ、、、、」 記憶が走馬灯の様に蘇る。そう、僕は橋川と一緒に、クラスの皆んなを殺す計画を立てた。橋川をいじめたからだ。「、、、思い出したよ」同じ部屋にいる、加藤と伊藤、串崎を刺して殺した。あと、男子は2人、、、 女子の部屋に向かった。その時だった。振り返ると、警察が銃を構えている。 「止まらないとうつぞ」 全く、無能なアホが、打てるわけがない。 「打てば、うんこ、が」 「本気だぞ」 「秀、行こう」 それ、、、、、ナイフを投げた。ナイフは見事にバカ警察の心臓に刺さった。 「よし、行こう」 女子の部屋についた。その時だった。 「ドスっ」背中が痛い。振り返ると橋川が笑っている。 「秀、貴方も一度私をバカにしたのよ」背中に手をやると、ナイフが刺さっていた。 「橋川、何で、どうしてだ」 「大丈夫、私も死ぬから」 そう言うと、橋川は自分の腹にナイフを刺した。 僕はその場に倒れ込んだ。目の前の景色が薄れてゆく。 「これで良かったのか、、、、」 「わからない。でも、、、、、」 もう、目が見えない。これが、死か。後悔はない。橋川も満足しているだろう、、、、、、、、、、、、 魂が肉体から、完全に分離した。 そうか、死後の世界は本当にあるんだ。僕は地獄行きだよな、完全に。頭上に天使がやってきた。 「あなたは、天国に行けますよ」 「そんな、、本当ですか?」 「はい」 僕は、正しかった。後悔はない。イジメは許さない。絶対に。
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