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ジッと見つめてくる少女。
僕と目線が合ってるのを確認すると……
おばけを見たような顔で驚いていた。
「お、おはようございます」
仕事柄住民の方と挨拶する事が多いからそう自然に挨拶をするとどうだろうか。
驚きは解れ、ニッコリと笑って喜んでいるではないか。
これはチャンスだと思うしかなかった。同時に髪が乱れて、作業着だった事を後悔する。やはり常に身だしなみは整えなくてはならず、職場で作業着に着替えなくてはいけないのだと反省した。
まぁそんな反省も明日には忘れてしまうのがアホの僕である。
よっしゃ、ナンパタイムだ。
「可愛いお嬢さん、こんな朝にどうしたんだい?」
そう大人の僕を見せるようにカッコつけて言う。
そう頭の中では思っていても実際は……
「ど、どうかしましたか?」
自転車を置いて、近づくまでは良かったがそれしか発する事が出来ない。僕はただのチキンボーイ。
彼女にはきっとアホ面かましたニワトリみたいな顔に見えたに違いない。
近づくと突然。僕の手を引いて自販機に近づける。とっても冷たい指。柔らかくて小さな手が触れただけで、その久しぶりに感じたそれにドキドキしてしまった。
何かを指さしてせがむ彼女。それは赤い缶のコーラだった。
僕もコーラが大好きだ。これを女の子が欲しがるだなんて、ちょっと嬉しい。
「……欲しいの?」
そう聞くと首をめっちゃ縦に振って切望する。
コーラなんかどこにでも売っているのに、まるでずっと探し求めていたものをついに見つける事が出来たかのような反応。
どうしても欲しいらしい。
こんな可愛い子の為ならばコーラを買う事などなんの躊躇いはない。
財布から千円を出して見ると、それを不思議そうに見つめる。それを入れてコーラのボタンを押すとガコンっと音を立てて出てきた。
「ほちょふっ?!」
その時、ビクッと驚いていた仕草もまた可愛い。
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