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青みがかった空が見えてから半刻ほど経過した。魔物は日が出ている時は活動が少なくなるため、ほとんど魔物と遭遇しなくなった。少し離れたところに木々に囲まれた大きな澄んだ湖が見えた。今までの経験上、ここで休息を取るのだろうという場所が見つかり、予想通り、主人からの提案があった。
「少しここで休もう。イオ、お前も疲れただろう?」
アレスが、少し疲れたように近くの岩場に腰を下ろしながら夜明けの光に照らされた湖の水面を眺めた。
「お心遣い頂きありがとうございます。
では、私は、彼方で倒した魔物の処理を行なっておりますので、ご用命が御座いましたら何なりとお申し付け下さいませ。」
イオはアレスの休息の妨げにならぬよう、岩場から少し離れた平地で作業をすると申し出た。しかし、アレスは額に眉を寄せた。
「それは急がなくても良い。まずはしっかり休みなさい。」
これはアレスの特別珍しい言葉ではないが、イオからすれば、このように自身のことを気遣ってくれる主の言葉には少し混乱してしまう。『あそこ』では、いくら自分が疲れていようとも、主人のことより優先することなどないというのが当たり前であった。
「はい。かしこまりました。ご主人様。」
従者としての仕事を失い、休みを命じられたイオだが、長時間歩き続けたとはいえ、強敵に遭遇することもなかったため体力は有り余っている。ましてやほとんどの魔物はアレスが片付けていた。主人よりも先に寝るという選択肢はないため、何かして動いていないと、という気分になってしまう。
捕獲物の処理は後で良いと言われてしまったために、ジッと直立していると、アレスが服に手を掛けているのがわかった。
「水浴をなさいますか?お供させて頂いてもよろしいでしょうか?」
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