第3章 世界は変わる?

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 4時限目の授業が終わると、待ちに待ったお昼の時間に、男子たちが騒ぎ出す。  お弁当を出して、私のほうから工藤さんたちに声をかけたほうがいいんだろうか、と考えていると、 「沢海さん、一緒にお弁当食べよう」  工藤さんと清水さんが来てくれた。 「うん」 「普段、どこでご飯食べてるの? いつも教室にいないけど」 「中庭。今日みたいに天気のいい日は気持ちがいいから」 「いいねっ。じゃ、中庭で食べよっ」  というわけで中庭へ。  私、工藤さん、清水さんという順番で1つのベンチに腰かけると、早速、お弁当をつつく。  しばらくは工藤さんと清水さんの話に相槌を打っていると、 「――それで……沢海さん、聞いてくれた?」  清水さんが興味津々に目を輝かせる。 「うん。好きな食べ物は焼きそばで、趣味は読書なんだって」 「へえ、案外、フツーなんだね」  清水さんが食事をしながらぼやく。 「ま、そんなもんだよね」  工藤さんもちょっとガッカリしたみたい。 「他にも、聞いたよ?」 「え、何?」 「好きな人、とか」 「ええ、そんなことまで教えてくれたの!? 沢海さんって聞くのうまくない!? 誰誰!?」 「うちの学校の人だったりする?」  2人は身体を乗り出してきたから、びくっとしてしまう。 「違う、みたい。昔……小学校の時に会った子、なんだって」 「へえ、クールっぽく見えて一途なんだぁ」 「うんうん、素敵ぃっ」 「2人とも、好きな人がいるって聞いても、残念そうじゃないんだね」 「まーねー。転校生と付き合いたいっていうより、知らない相手のことを知りたいって好奇心が強かったし」 「沢海さんこそ、残念だったとか?」 「! そ、そんなことは……」  頬が熱い。 「あー。沢海さんもちょっと期待してたんだぁ。ま、そーだよねー。隣に格好いい男子がいるんだもんねーっ」 「ね、沢海さん。名前で呼んでもいい?」 「え……」 「駄目?」 「あ、い、いいよ。うん、大丈夫……っ」  はじめてのことに、ドキドキしてしまう。 「じゃあ、私のことは美和って呼んで」 「私もあずさで、ヨロシクー」 「工藤さ……美和さん、あずささん」 「呼び捨てでいいのに。ま、栞らしいけどねっ」  それからは美和さんとあずささんの話を聞いていると、 「――それにしても今朝の晴海、見た?」  そう美和さんが言ったのだ。 「見た見た。健気ってカンジだよねー」 「? 近藤さんがどうかしたの?」 「栞、知らないの? 晴海、綿引君のことが好きなんだよ」 「そうなの……っ!」 「本人は隠してるつもりだろうけど。今朝、晴海を玄関で見なかった?」 「見た。なんだか落ち着かない様子だったけど……」 「あれも綿引君を待ってたんじゃないかって話」 「……そうなんだ」 「晴海は自分の気持ちがバレてないつもりだろうけどさ、知らないのは綿引君と晴海、本人たちくらいだし」 「へえ」  工藤さんと清水さんと過ごす昼食の時間は、いつもよりもずっと早く過ぎた。 「また、一緒に食べようよ、栞」 「うん」  誰かとお昼を食べるって、楽しいな。
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