美少女戦士たちの憂鬱

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 初めて変身したのはいつだったか?  確か15才の時だから●0年近く前? かな?  10代だった私もいつの間にかアラ○○○になってしまった。  はじめの2、3年は「存在を隠して活動することが正義の味方!」などと言っていたが、悪(笑)の組織との闘争は意外なほど長期化してしまった。それに謎な事件が増加するにあたって警察組織も動くはめになってしまった。とはいうものの、結局は我々のような”戦士”でなければ倒せない敵もいるわけで―――。  そんなこんなで”魔法少女”は世間に知られる存在となったのだ。  しかし、正体はバレていない。これこそが我々の組織の特殊な力のひとつである”認識阻害”の技術なのだ。 「ちょっと、風太郎! 今日はクライアントとの打ち合わせの日でしょ? 早く食べないと遅れるわよ! 遥も! 今日から中3でしょ? 来年からは高校生なんだからね! 初日から遅刻したって、ママ知らないわよ!」  私、プリティーハッピーこと斎藤美幸(みゆき)(旧姓:星乃)は一児の母であり、大学生の頃から付き合っている斎藤風太郎の配偶者でもある。  ちなみに夫はフリーランスのライターだ。娘の遥は中学3年生の思春期アンド反抗期の真っ只中。私が彼女ぐらいの時だったかな、”戦士”になったのは。 「ちょっとママ! なんで早く起こしてくれないのよ!」と、遥。マンガのセオリーよろしく食パンをかじって「遅刻、遅刻~!」をやりそうな雰囲気を醸し出している。  風太郎の方は「あれ? 今日だっけ? いやぁ、忘れてたなぁ。ははは」と最近では”いつも通り”となったド天然ぶりを発揮している。今のこの調子では就業時間が9時17時のホワイト企業でも勤まらないだろう。さきほどからずっと頭に乗せているメガネを「メガネ、メガネ……」と、探している。時間的に余裕がある。まだ教えなくてもいい。  ―――それではお待ちかねのコーナー、今日の”魔法少女”です――― 「ほらほら、このコーナーが終わるまでに出発しなかったら遥は遅刻決定だからね!」洗面所から、はいはいと聞こえる。認識はしているようだ。  そして奇しくも今日のコーナーで特集されているのは何を隠そうこの私、プリティハッピーである。どうやら先週の豪華客船での一件をまとめたもののようだ。  認識阻害のおかげで家族であっても私がプリティーハッピーであることには気づいていない。それでも自分の雄姿がテレビに映るのはうれし恥ずかしいのである。  ソファでのんびりとコーヒーを飲みながらテレビを観ている風太郎が「ママ、魔法少女のプリティーハッピーって昔からいるよね? 見た目は少女なんだけどさ。年齢的には少女っていうより熟女? はっきり言って、おば―――」と、言ってはならないことを口にしそうになったので機先を制す。 「風太郎……女性を年齢をもって判断、区別するというのは人としてどうなんだろうね? 是非、娘の遥にもそのご高説を賜りたい!」私がそう言うと、風太郎は、うっ……となり、閉口する。  まぁ、仕方ない。まさか、自分の最愛の人(照れる(〃▽〃)ポッ)がプリティー戦士のリーダーであるプリティーハッピーだなんて思わないだろう。  そんな慌ただしい中、着信が入る。  視線を左手のプリティーウォッチに移す。決してアッ●ルウォッチではない。こちらのプリティーウォッチの方が先だし。まぁ、アッ●ルウォッチの存在がプリティーウォッチを違和感のない状態にしてくれたこと自体は素直に認める。高校生の頃は●●戦隊みたいだね(笑)と言われたこともあるし……。まぁ、当時はスマホではなく、ポケベルが主流だったけど。PHSって懐かしいな。  着信は竜胆有紀(りんどうゆうき)―――プリティーブレイブからだった。
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