本当にそんなんで勝負する気ですか、先輩?

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本当にそんなんで勝負する気ですか、先輩?

「なぁ、あれさ。3年の富樫先輩じゃね? 陸上部の」  屋上で寝ころびながらぼんやり空を眺めていると、そんな会話が耳に入ってきた。彼ら―――クラスメートの佐藤と吉田―――はグランド方向を指差している。 「え? どれよ?」富樫先輩と同じ中学だった吉田には見つけられないようだ。 「ほら、グランドの街灯近くでフラフラしているヤツ」 「ああ、あれか。ジャージ上下だし、普通に目立つな」 「朝練の途中だったんじゃねぇの? なぁ佐々木」と、昔のイケメン風な茶髪ロン毛の佐藤が話を振ってくる。  佐々木はだるそうに立ち上がり佐藤と吉田がいるフェンス付近まで近づく。  正直、グランドが見える位置には近寄りたくなかった。佐藤たちが嫌いなわけでも、高所恐怖症というわけでもない。  グランドの街灯付近を探す。すると見慣れた姿を見つけた。「ああ、そうだな。あれは間違いなく富樫先輩だよ。随分変わっちまったけどな」佐々木はすぐに目をそらす。 「まぁ、こういう状況だし。俺もすぐにはわからなかったわ」と、吉田が野球部特有の坊主頭を掻きながら、照れくさそうに言う。 「でさ、佐々木。どうする? この状況」と、佐藤。 「どうするって、言われてもねぇ」佐々木は考える。しかし、良い案がまったく浮かんでこない。  世の中、どうにもならないことが起こることがある。  まだ高校生だし、問題解決の幅にも限界がある。  とは言うものの、この状況はどうにもならないのではないか? と、そんな考えが3人の頭の中に浮かんだ。  2xxx年●月▲日0850現在。街はゾンビで溢れていた。
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