本当にそんなんで勝負する気ですか、先輩?

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 バーン!! と、大きな音ともに屋上の鉄の扉が開いた。  来ました! 来ましたよ。ゾンビさんたちが! ご一行様の到着で~す。と、佐々木が思ったかどうかはわからない。  が、何者が屋上へとやってきた。  この状況で、この音である。  3人は扉を注視する。 「こんなところにいたのか? 助けに来たぞ! 君たちぃ!」と、田中は開口一番に叫ぶ。 「た、田中……」さすがの吉田も引いている。それもそのはず。  眼鏡にキリっとした切れ長の目。黒い長髪。身長は吉田と同じ180cmほどだろうか。ただ、吉田と違い、やせぎすではあるがその風貌は一見して頭良さそう。  しかし、田中は学年一の「変人」として名高い。 「その顔は……。ああ、そうか。君たちは、なぜ世界がこのようにゾンビだらけになってしまったのか? という理由が知りたいのだな? いいだろう。この天才田中総一郎がお答えしよう」ああ、はじまってしまった。これが3人の共通認識である。 「そもそもゾンビとは呪術、まぁ君たちレベルでは力でいいだろう。その力でもって死体のまま蘇った人間の総称だ。ファンタジーの世界では腐った死体が歩くとった描写がなされるているのは君たちでも知っているだろう? その起源は西アフリカのベナンやカリブ海のハイチなどで信仰されているブードゥ教にあると言われている。ブードゥ教は教義、教典、教団といった現代の宗教団体が持っているものを持たない。その儀式も動物の生贄をささげたり、神が乗り移ったりする神がかりな踊りなどから構成されているのだ。それにだな―――」 「すまん、田中。結論からお願いできるかな? 結論から」佐藤がしびれを切らしてその結論を促す。 「わかった、わかった。せっかちだな君たちは」田中(蘊蓄(うんちく)王(仮))は眼鏡をくいっと挙げながら苦笑する。その振舞いからは知性を感じる、かもしれない。  が、しかし――― 「理由はな、ブードゥの神々に生贄をささげてゾンビ化したのだ。それでゾンビが増えてしまった、というわけだ!」  そう、田中(略)は基本的にバカなのだ。  (Who)、(What)、(How)の全てが不明確。  口調は天才のそれなのだが、中身はないに等しい。結論も肝心なところが抜けている。 「―――結局、知らないわけね」と、吉田。 「なんだかんだで増えたと言っとるだろうが!」と、田中(略)。  この不毛なやりとりはしばらく続いた。
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