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村から町への発展
村の生活は不便を当然の様に受け入れている。
衣食住が備わっていれば暮らしていけるからだ。
しかし、少しでも裕福な暮らしを始めると前の生活には戻り辛い。
風呂が生活の一部に加わった今、村人達はもう風呂無しの生活には戻れない。
現代生活の一部を取り戻せた私は、次なる不便を失くすべく、知恵を絞っていた。
村人の生活サイクルは太陽と共にあり、日が落ちれば帰宅して蝋燭の灯りだけを便りに夜を過ごし、消えれば就寝する。
蝋燭の代わりに灯せる素材は油と魔石である。
油は家事や歯車の潤滑剤として利用されたり、街灯や冒険者が使う松明よりも長持なランタンとしての需要があるので村での使用には向かない。
そして、魔物から出る魔石は討伐して初めて入手できるので蝋燭よりも高い。
だから冒険者は魔物を倒して魔石を街で売り、その金で新しい装備や娯楽に費やす。
冒険者が居付くのは街や城下町。
そして、ダンジョンが近くに有る町だ。
ダンジョン近くの町には冒険者ギルドと宿屋が必ず建てられ、その内娯楽施設が建ち並び出し、何れは街へと発展する。
では、村から町へはどうやって発展するのか?
一つは村人が子供を生み続けたり、他の村や流れて来た人が永住して家が建ち並び、畑や家畜の世話以外で物作りが増える事。
もう一つは商人や冒険者が頻繁に訪れて、村にお金が舞い込む様になる事。
私達の村は他の村からは離れているし、物作りに適した環境でもない。
森は有るが、冒険者ご頻繁に来る程魔物は増えていない。
ならば、商人が頻繁に来る程の何かを用意しなければならない。
商人は何故訪れるのか?
利益、其所へ金儲けが出来る何かを求めてやって来る。
そう、特産品だ。
その村でしか手に入らない特産品を街へと持ち帰り、商売すれば利益が出るのだ。
畑で育てているのは村人達や家畜の餌になる作物で他所でも当たり前に有るので特産品にはなり得ない。
だから、もし特産品を産み出すのであれば遠くの地、馬車で何日も離れた場所でしか育てていない作物を新しく畑で育てれば良い。
その候補は、街に有る。
私が祝福を受けに街の教会に行った後で、土産も予て市場を両親と見に行った時に見つけていた。
私は大量に水を使う作物は無いか両親に訪ね、月に一度有る村長宅の集会で話が持ち上がり、街に有る作物を買って育ててみようと決まった。
そして、街に買い出しに行って村人が持ち帰った作物が此方。
トウモロコシだ。
半年後、領主に税として納めてから暫くして商人が訪れる様になった。
その商人はトウモロコシを買い付けに行くのがこの村からだと半分以上の日数で済む様になると大変喜んでいた。
商人が他の作物と一緒にトウモロコシを大量に買い付けに来るので、態々街に売りに行かずに済むし、商人は利益が増えるのでお互いがWin-Winである。
トウモロコシは家畜の餌にもなり、新しく家畜を育てる環境が整い、育てるための人員が不足するので領主に御伺いをしたら、村に永住する人を寄越してくれた。
そして、数年で村は町へと発展して、蝋燭の生活からおさらば出来た。
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