6.優勝劣敗

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6.優勝劣敗

そして、床に戻ると半紙をセットした。 『優勝劣敗』の文字が、半紙に墨も鮮やかに描かれる。 言葉通りの荒々しい猛々しさはない。 秘めたる思い、伏して待つしなやかな美しい力強さ。 「橘樹くんが作るのはこれだね。でも試合はそうはいくかな?」 強者は勝つ、弱者は負ける、その理は変わらないと司は信じている。けれど、試合は本当に、うまくいくのかと悠花は問いかける。 司は瞠目する。悠花の挑戦的な眼差しは、揺るがない。 漆黒は、勝気が煌めき、まるで黒曜石のようだと思った。 浮かべる笑み、柔らかな輪郭を描く頬は人形のような無垢さを表すのに、内に秘めた強さは、流れに身を任せしなやかに上へと上り詰める竜だ。 「君は、僕と同じだ」 「?」 「負けることをよしとしない。君が男だったら、間違いなくバスケ部に誘っていたよ」
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