本編

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はい、来てしまいました。 今私は目の前の「テスト計画表」と格闘していた。 「武井さん顔怖い…w」 隣から声が聞こえる。 S氏である。相変わらず眠そうな顔をしていた。 彼は机にうつ伏せになりながらもなんとかペンを進めているよう。 「げ、バレンタインにテストですか…」 私の前の席でつぶやいたのは相澤光輝。 光るに輝くと書いて、光輝(こうき)と読むらしい。 彼はとても不思議な人だ。 全教科合計470点という高得点を取りながらも、一度もワークを解いているところを見たことがない。 都市伝説レベルに誰も見たことがないらしい。 のくせに提出物はきちんとしている。 丁寧でありながら時々大ボケをかますコミュ力の高さを先生に買われ、現在は学級委員をしている。 相性はアイピー。サッカー部には独特な相性を持ったやつが多いらしい。 横目でS氏を見た。 彼はさっさと計画表を立て終え、目を閉じていた。 こいつも独特な相性を持つサッカー部だ。 アイピーは早速隣のお姐ちゃん……森川さんに話しかけていた。 「森川〜」 「どした、アイピー」 彼はお姐ちゃんに向かって笑いかける。 「僕、バレンタインに選ばれんたいん」 「……はぁ!?w」 お姐ちゃんは顔を真赤にしていた。 「なぁにいってんのwwアイピーそういうの良くないって…」 「はははっははははははww」 アイピーは無表情で笑い声だけを表に出す。 「ばっっかじゃないんwwアイピーw」 私も彼らにつられて笑い声をこぼした。 と、ふとアイピーは真剣な顔に戻る。 あぁ…これ大ボケかます前の表情だ。 「森川、武井、S氏〜〜」 S氏は急に名前を呼ばれて跳ね起きたようだ。 「え…?何。どした」 S氏は周りをキョロキョロし、そして目線をアイピーに合わせた。 彼も察したようだ。 「僕さ〜……去年バレンタインもらったんですよねぇ…」 森川はその話に少しだけ身を寄せた。 「んで?それでどうしたの…?」 「もらったのがプラレールだったんですよ」 S氏の耳が少しだけ動いた。そしてなぁんだ、とも言いかねない表情でうつ伏せになる。 どうやら聞いたことがあるボケだったらしい。 「そして振られちゃった」 アイピーは手をわざとらしく広げた。 「プラレールでふられーる…だろ…?w」 S氏はまだ起きていたらしい。そうつぶやいた。 「もー…S氏なんでネタバレしちゃうんですかぁ…」 アイピーはそう言いながら後ろを向いた。 「武井の気を引いてるのが気に入らなかったんですね…?」 と、S氏は眠そうだった目をかっと見開き大声を出した。 「な、そんなんじゃねぇしっっ!!」 おおおおお……。何だその反応は…… S氏はチラっと私の方を見た。 「……武井さん、テスト計画表まだ終わってなさそうだったから」 ペンを握った。 目の前のテスト計画表には自身の名前以外、書いていない。 「……やべ」 S氏はまたうつ伏せになった。そして足をぶつけてくる。 「俺、チョコほしーかも」 !??????????????????!! どういうことだい?それは。 「バレンタインってチョコもらえるからホント嬉しい」 どうやら彼はチョコを貰うこと以外、考えていないようであった。 続く(?) 次ページからバレンタインの日。
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