モナ・ブラウン略してモブです☆って煩いわ!!!!

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モナ・ブラウン略してモブです☆って煩いわ!!!!

「ねぇ?俺お腹空いちゃってさー。ここの名物ってなんなの?」 固まってそれこそうんともすんとも一向に答えない私に、重ねて鎧の勇者が問いかける。 整った顔立ち、輝くゴールドの髪、爽やかなブルーの瞳。 引き締まった体に纏った輝く防具。 状況が違えばイケメンが来た!とあちこちから黄色い声があがりまくり、酒場の女性モブ達はしばらくは彼の話題で酒が美味いだろうが、いや、そちらのご質問はどうか状況を考えて、勇者さま。 貴方は、ワイバーン倒したとこだし、私はぼろぼろだし、周りは貴方のお仲間の魔法使いさまが鎮火作業されてるとはいえ、まだ火が燻っているし、蜘蛛の子を散らすように逃げたモブたちもいたが、怪我してるモブも私を含めているわけで、今は名物聞く前にほら、言うこと、する事たくさんあると思うのですが? 瞬きだけ繰り返し、動けずにいる私に勇者さまは目の前にしゃがみこむと「あれー??」と首を傾げてくる。 「状態異常かな?鼓膜やられちゃった?」 いいえ、状態異常なのはあなた様の頭では? 勇者はぶつぶついいながら、空中で手のひらを滑らせ、「負傷箇所はあるけど、別に数値に問題ないよねー」とまるで本のページでもめくるように手をしきりに動かしている。 あ、これ、みたことある。 冒険者のもつステータス閲覧能力だ。 名前もスリーサイズも居住地もなにもかもが筒抜けなので、昨今はプライバシーの問題が騒がれて久しく、使用する冒険者は一部になってしまったが、実際目の前にすると空中を手のひらで撫でているかのようで、見えない私(モブ)からすれば、なんだか滑稽だなぁと使用する冒険者を見て思っていたが、やはり間近で見ても滑稽だ。 「えーっと、モナ?モナ・ブラウン?大丈夫?」 モナ・ブラウン??はて、それは私(モブ)の名前だろうか? いつの間に名前持ちに? もしやこれからモナ・ブラウン(わたし)の物語が始まるのだろうか! あちこち血だらけでぼろぼろの体も歓喜に震えそうになるが、ん?と固まる。 いや、まて。 モナ・ブラウン 頭文字をとれば モ ブ なるほど。 モナ・ブラウン略してモブ なるほど。なるほど! モナ・ブラウン略してモブです☆って煩いわ!!!!! 結局私は名前がつこうがつくまいがモブはモブなのか。 私はがくりと肩を落とす。 できればもっとモブから離れた名前が欲しかったです、神さま。 「……勇者さま。 ここの名物はスピスピ鳥の丸焼きよ」 なんだかいろいろ諦めていつもの台詞を口にする。 あぁ私(モブ)の日常という感じだ。 周りの状況が日常とはかけ離れすぎて、勇者の遥か後方をぼんやりとうつしながら垂れ流すように吐いた台詞だけが、いつも通りだった。
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