『もう一人の人面犬』

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 ドロンジョの巧みなつっこみも俺の頭には入ってこなかった。今、俺の頭はパソコンがフリーズしたかのような状態だ。  ドロンジョが言ってることが本当なら、今、どうして生放送にドロンジョが映っているのか説明がつく。  俺が今日、神社で会ったドロンジョは……。  テレビに映るドロンジョは、そのままトークを続ける。  「あいつは金の亡者なんや。わしから小判奪いよって、それでもまだ人間騙してお金奪ってるらしいんや。皆もくれぐれも気いつけてや。お金奪われたら、そのままドロンされるからな!」  ドロンジョが画面越しに注意を呼びかけている。  「そうですか。ドロンジョさん、お話が盛り上がっているところですが、どうやら時間のようです。番組のコーナーが終わる前にドロンジョさん、最後になにか言うことはございますか?」  「せやな。もうそんな時間か……」  「はい、たくさんトークしていただきありがとうございました」  「じゃあ、最後に一つだけ!」  「はい」  「実はな、姉ちゃん、明日、日本ダービーがあんねん」  「は? 日本……ダービー?」  「競馬や、競馬! 日本一大きい競馬の大会が明日あんねん!」  「で、それが、なにか?」  「姉ちゃんの知っての通り、わし、今、金欠なんや。小判全部、あのアホに取られたしの……」  「は、はあ……」  「わしがめっちゃご利益ある妖精って話は最初に聞いたよな?」  「え? ま、まあ……」  「せやから姉ちゃん、かわいい妖精のわしに免じて、金貸してくれへん?」  「……」 〈終〉
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