『奢り』

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 「ほんまや、ほんま。兄ちゃん、元市長の萩原(はぎわら)さんって知ってるか?」  元市長の萩原って……確か俺が生まれた年に市長だった萩原泰(はぎわらやすし)っていう人のことか? もう30年くらい前の市長なんだが。  「もうかれこれ30年前の話やけどな、わしが脱水症状で倒れているところを彼が助けてくれたんや。わしを日陰まで運んでくれたり、ポカリを飲ませてくれたりしてな。そのおかげでわしは助かったから、彼にお礼したんや」  「お礼?」  「小判を五十枚あげたんや」  「小判!?」  「せやせや。昔、家康(いえやす)に貰った小判や。命を助けてくれた礼に彼にやったんや」  「家康(いえやす)!? もしかして……徳川家康(とくがわいえやす)のことです?」  「兄ちゃん、他にどの家康がおんねん」  「徳川家康ですか!? そんな前から生きてるんですか!」  「せやで。ま、妖精やから人間よりかはだいぶ長生きできるしな」  そんなに長生きしてたのか。もしかして見た目に似合わず、こいつは本当に妖精なのかもしれない。  「兄ちゃん知ってるか? 家康が最初に小判を考えたんやで。当時、大判を作っていた豊臣秀吉(とよとみひでよし)に、家康が許可を得て作ったのが小判なんや。そんで小判を作った記念に家康が親友のわしに大量の小判をプレゼントしてくれたんや」    見た目に似合わず、スケールの大きい話に動揺してしまう。
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