『奢り』

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 「すごい話ですね……」  「せやろせやろ。ちなみに兄ちゃん、小判一枚の価値を現在のお金に計算したらいくらくらいやと思う?」  突然のクイズに少し戸惑う。  「……五千円くらいですかね」  「ブッブーー! 不正解!」  ブサイクな顔で不正解を言われ、無性に頭にくる。  「正解は……だいたい約四万円くらいや」  嘘だろ。てことは、五十枚でだいたい二百万円くらいじゃないか。その話が本当ならこの妖怪は、いや、妖精はかなりの御利益がある。そう思うと不思議なもんで段々こいつが天使に見えてきてしまった。  「す、凄いですね! まるで座敷わらしみたい」  「まあ、座敷わらしも妖怪やけど褒め言葉にしといたるわ」  俺はもしかしたら、今日はついているのかもしれない。こんなにも早くチャンスが目の前にやってくるなんて。なにがなんでも、こいつを逃がす訳にはいかない。もし逃げられたら、次はもう会えない可能性もある。  「あ、あの!」  「なんや?」  「もしかして、お腹とか空いてません?」  「ん? なんで?」  「いや、あの、さっき落ちてた柿をガツガツ食べてましたよね? もしかしたらまだお腹空いてるんじゃないかと思って……」  「まあ、空いてるっちゃ空いてるな。柿くらいじゃ全然腹満たされへんし」
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