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「実はさっきコンビニでパンをたくさん買ったんですよ! 良かったら一つどうです?」
「え? ええの?」
「いいですよ! 車の中にあるんで取ってきます!」
俺は車まで駆け足で急ぐ。その足取りはさっきまで腰を抜かしていたとは思えないほどの軽快なものだった。無理もない。相手は非常に御利益のある妖精だ。こいつに恩を売ったら一体どれだけの見返りがあるのかと想像すると足取りもステップを踏んでるかのように軽くなり、抑えていた笑みも思わずこぼれてしまう。
コンビニで買ったホイップコロネを一つやると、数秒でそのパンは俺の前から姿を消した。人面犬の口の周りにはクリームがべっとりとついていたが、それも長い舌によって口の中へと消えていった。
「かー!美味かった! 兄ちゃんら人間はいつもこんな美味いもん食ってんのか?」
「まあ、時々……」
「ええなええな。わしなんかいつもマックでゴミあさりしたり、バッタやキリギリスとか食ったりする毎日なんやで。虚しゅうてしゃーないわ」
「そ、そうなんですか」
俺はコンビニで買ったあんぱんの袋を開ける。あんぱんに齧りつこうとした時、妙な視線を感じた。なんと人面犬がよだれを垂らしながらこちらを見ていた。
「もしかして……まだ食べたいんですか?」
「え? いやいや。何言ってんの、兄ちゃん。一つ貰っただけでも感謝しとるよ!」
と、言いながらも人面犬はよだれを垂らしながら羨ましそうにこちらを見てくる。
「いいですよ。そんなに欲しいなら、あげますよ」
「え? ええの? 兄ちゃん優しいなあ。ほんまにありがとう!」
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