『出会い』

2/6
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
 コメンテーターの男は女子アナの言葉を信じていない様子だ。女子アナは続けて話す。 「実際にスマホで撮影された映像がSNSやユーチューブで流れています。こちらの映像をご覧下さい」 ──映像が切り替わる。スマホで撮影されたであろう映像が画面に流れる。  映像はとある神社が映されていた。  カメラが神社の鳥居にゆっくり近づく。  よく見ると、鳥居近くの手水舎(ちょうずや)の隣で小豆を洗っている小汚いおっさんがいた。    いや、おっさんではない。妖怪の……小豆洗いだ。 「マジ、本物!? スゲー! 小豆洗いだ!」 撮影者は初めて見る妖怪に興奮している様子だ。しかし、小豆洗いらしき妖怪は撮影者を気にも止めずに、たらいの中の小豆を手でひたすらかき混ぜていた。 「あの、あずき、小豆洗い……ですよね?」 小豆洗いは撮影者を無視している。 「あの、握手して下さい!」 「ふー。あのさぁ、握手くらいなら別にいいけど、勝手に許可なく撮るの……やめてくれる?」 「あ、すいません!」  ──映像はそこで終わる。画面は再びスタジオに戻る。 「今の映像は高校生の男子学生が撮影した映像でした。ユーチューブではすでに今の映像がアップされており、なんと再生数が1千万回も達してます!」 「はははは。あれのどこが妖怪なんですか? ただのおっさんじゃないですか。笑わせてくれますね」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!