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「わしはな、昔、天照様のもとで召使いやりよったんや。何百年も天照様の手となり足となり働きよった」
「へー、以外な過去があったんですね」
「ある時にな、今までの功績を讃えられて天照様に『なんでも願いを一つ叶えてあげる』って言われたんや。そん時にお願いして手に入れたのがこの腹ポケットなんや。すごいやろ?」
なんてしょうもないことに願いを使ったんだよ! とつっこもうとしたが、怒鳴られそうな気がしたのでスルーした。
こいつは結構頭は悪いが、天照大御神様のもとで働いていた話が本当なら、やはり本当にご利益があるのかもしれない。
「兄ちゃん、お金ありがとうな! この金は絶対に倍にして返したるからな!」
ば、倍に!? なんて嬉しいことを言ってくれるのだろう。まさか自分の口から言ってくれるとは。だが、ある疑問がすぐに浮かび上がる。
「ところで、ちょっと聞きたいのですが……」
「なんやなんや。なんでも聞いたらいいがな」
「競馬では成績はどうなんです? その……結構勝つほうですか?」
「わしか? まー、かれこれ10年くらい競馬に通いよるけど、負けたことないな」
すごい。10年も通って負けなしとは。普通の人間なら不可能なことだ。人間じゃないけど。
「明日のレースはわしのお気に入りの馬が二頭出るんや。一頭は『ケツゲ・ボー』っていう名前の馬で、もう一頭は『ヒンニュウ・ヤマダ』っていうんや。カッコいい名前やろ?」
「キラキラネームより酷い名前ですね」
「兄ちゃん、なんでも名前で判断したらアカンで。ケツゲ・ボーもヒンニュウ・ヤマダも立派な馬なんや。この二頭は今大人気の馬なんや。それにまだ若いし、これから競馬界を盛り上げるエースたちなんやで!」
「なるほど」
「まあ、とりあえず、明日のレースで勝ったら兄ちゃんに倍にして返すさかい。楽しみにしとってや!」
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