『もう一人の人面犬』

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 車に乗り、エンジンをかける。コンビニで買った缶コーヒーを飲みながら、テレビをつける。  「『スクープワイドショー!』の時間です。今日も生放送でお届けします。いきなりですが、最近、日本では不思議な現象が起こっているのを知っていますか?」  番組の司会を務める女子アナが言う。この子は俺の押しの子だ。とっさにテレビのボリュームをあげる。  「妖怪が全国に出現してるんでしょ? なんでもお金をあげたり貸したりすると、ご利益が返ってくるって話だけど。胡散臭いな」  もう一人の司会のお笑い芸人の男が喋る。こいつは中堅の立ち位置だがネタもトークも面白くないし、自慢話ばかりするから嫌いな芸人だ。  「今日はなんとですね、番組に特別ゲストが来ています!」  「え? 誰誰?」  知らされてなかったのか、司会の芸人も驚く様子を見せる。  「ではお入り下さい! どうぞ!」  カメラが番組中央のセットの右横にある大きな赤いカーテンを映す。明るいBGMが流れたと思ったら、カーテンが開いて中のゲストが現れる。が、俺は自分の目を疑ってしまう。  「今日のゲストはなんと本物の妖怪、ドロンジョさんです!」  「どもども! て、姉ちゃん! わしは妖精や! 妖怪ちゃうで!」  「あ! すいません! 間違えました!」  なんとカーテンから出てきたのはあの人面犬……ドロンジョだった。
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