『出会い』

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 それだけじゃない。長年の夢だった高級タワマン生活も送れる。フェラーリを乗り回しながらクラブで美女たちと遊び回ることもできる。  人生を変えることができるチャンスだ。絶対に見つけてやる。絶対に。  夕方のニュースもいつの間にか終わっていて、気がつけばバラエティ番組が始まっていた。  さっきまで明るかった外も、いつの間にか夕焼けの世界に変わっていた。  ふと、神社のほうに視線を向ける。    神社の鳥居の下で何やらもぞもぞと動いているものが薄っすらと見えた。俺は車のドアを開けてゆっくり降り、ホームセンターで購入したLEDライトを点け鳥居のほうに光を照らした。  小さくて、はっきりと分からない……が、なにかが動いている。  俺は『もしや!』と思い、急いで神社の鳥居まで走った。  こんなに胸が高鳴るのは久しぶりだ。学生の頃、なけなしのお金で秋葉原に行き、当時最新ゲーム機だったPS3を買いに行った時以来のドキドキかもしれない。  だんだんと鳥居に近づくにつれ、『それ』の姿があらわになる。  犬だ。犬が俺にお尻を向け何やらガツガツと下品な音をたてながら食事をしている。しかも、この後ろ姿からしてこいつはパグだ。俺の実家の近所に住んでいる幼馴染の友達がパグを飼っていて、後姿がそっくりだからすぐにわかった。  パグの周りには柿の実がたくさん落ちている。神社の鳥居の横を見ると柿の木が一本立っていた。おそらく、自然に落ちた柿の実を食べているのだろう。  「なんだよ。野良犬かよ」  俺は愚痴ったあと、ズボンのポケットからマルボロを取り出す。煙草を一本口にくわえ、後ろポケットから百均ライターを取り出し火をつける。
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