『奢り』

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 「なんや、立てれるんやないか。良かった、良かった。あ、それより兄ちゃん、ゴミはちゃんと持って帰らんとアカンで。神社にポイ捨てなんかしたらバチ当たるで」  「え? あ……はい」  化け物のくせしてまともなことを言う。  「この神社はな、全国からぎょうさん人がお参りに来るんや。たくさん人が来る分、神社にゴミがよく散乱しとる。それをいつも神主さんや、地域の人が綺麗にしてくれとるんや。わしはそんな人達を尊敬しとるから、気軽にポイ捨てしとる奴見ると見過ごす訳にはいかへんねん」  「す、すいません」  「話が分かりゃ、それでええ。人間誰でも間違いはあるんやし」  「……」  「分かったんなら、はよゴミ拾いーや!」  「は、はい」  俺は言われた通り自分で踏んでクチャクチャにした煙草の吸い殻を拾いに行く。吸い殻を拾い上げ、それをズボンのポケットに入れた。  その瞬間、俺はハッと気づく。  もしや……いや、人面犬は確か妖怪の(たぐい)だったはずだ。こいつこそ俺が探していた妖怪じゃないのか? なのに俺ときたら、つい初めて見る妖怪にビビってしまった。  「ところで兄ちゃん、こんな所で何してたん?」  そうだ。俺は妖怪に恩を売るために隣町から来たんじゃないか。  「ちょっと神社に……手を合わせに来たんです。まぁ、その、お参りをしに」  「おお! そうかそうか!」  人面犬は何故か嬉しそうな表情をする。
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