第四章「I show 相性」

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 気分転換に、夜風に当たろうよ。  そう持ち掛けられた俺は、特に断る理由も見当たらなかったため、楓とベランダに出ることとなった。  秋の夜長の外気は、ほどよくひんやり心地よい。鈴虫のリンリンという音色も相まって、最近働かせすぎていた脳味噌が、少しずつリフレッシュされていくような感覚になる。 「ほれ、優の分だよっ」  柵に手を掛けてぼんやりと街並みを眺めていると、急にアルミ缶を投げ渡された。 「うおっ、ととと」  慌てつつも、なんとか両手で手中に収める。 「えへへ、ナイスキャーッチ」 「なにがナイスキャッチだ。つーか……これ、酒じゃねぇか」  缶に描かれているのはデカデカとした『生』の文字。どう見ても、ビールである。 「コレ、どっから持ってきたんだよ」 「あー、さっき少し部屋に戻って、冷蔵庫から取ってきたの。まあ、細かいこたぁ気にせず、今日は飲みんさい。ほれ、グイっと」 「……まあ、今日くらいは付き合ってやるけどよ」  普段は全くと言っていいほど、酒は飲まない。そもそも酒は、そんなに好きでもない。 「じゃあ、乾杯」  だが、なんとなく。今日だけは、飲みたい気分だった。 「いぇい、乾杯!!」  カツリと互いのビールを触れさせ、タブを引っ張って缶を開栓。  プシュッと空気が抜けて、泡が雲のように溢れだした。 「「やばい、こぼれる!!」」  二人同時に、慌てて口で泡を掬う。 「かぁー、うまいっ!」 「にげぇ!」  漏れ出た味の感想は、真反対であった。 「クソ。やっぱビールはダメだな。未だに良さがわからん」 「ふふふ、優はお子様舌だなぁ。苦いのが良いんじゃん」  ゴクリ、またゴクリと。楓は更にアルコールを摂取していく。 「ほんとオッサンみたいだな、お前……」 「あーん? 失敬なぁ。私はまだピチピチの二十一歳なんだぞーう?」 「酔い回るの早いっつの!!」  頬を朱に染め、早速ほろ酔い状態の楓。思いの外、酒には強くないようだ。 「へっへん。よーし、早速私がユウサックンのお悩みをサクッっと解決してあげるぞぉ。ほれほれ、ちゃっちゃと私に話してみそ?」 「へいへい、わーったわーった」  だが、そんな楓のおかげで気楽に話せるようになったというのもまた、悔しいことに事実だった。
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